蓮風の玉手箱

このサイトは、2011年8月7日~2015年8月29日までの間、産経関西web上において連載された「蓮風の玉手箱」を復刻したものです。鍼灸師・藤本蓮風と、藤本漢祥院の患者さんでもある学識者や医師との対談の中で、東洋医学、健康、体や心にまつわる様々な話題や問題提起が繰り広げられています。カテゴリー欄をクリックすると1から順に読むことができます。 (※現在すべての対談を公開しておりませんが随時不定期にて更新させていただます・製作担当)


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初回公開日 2011.8.14
小山修三2
小山修三(こやま・しゅうぞう)文化人類学者。1939(昭和14)年、香川県出身。1976年、同博物館助教授となり、同教授を経て2002年から名誉教授。04年から大阪・吹田市立博物館館長をつとめている。『狩人の大地―オーストラリア・アボリジニ―』『美と楽の縄文人』『森と生きる―対立と共存のかたち―』など著書多数。『梅棹忠夫 語る』の聞き手もつとめた。
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 鍼灸や東洋医学の本当の姿を知ってほしいという思いで治療や後進の育成に取り組む鍼灸師・藤本蓮風さん(藤本漢祥院院長/北辰会代表)のコーナー「蓮風の玉手箱」が7日から始まりました。エッセイや動画なども含めて何が飛び出すかわからない「箱」の蓋(ふた)がいよいよ開きました。初回の序文に続く今回はオーストラリア先住民のフィールドワークや縄文時代の研究で知られる小山修三・国立民族学博物館名誉教授と蓮風さんの対談です。ふだんから交流のあるお二人の和気藹々(わきあいあい)とした会話から「鍼」の大きな可能性が見えてきます。(「産経関西」編集担当)


時代が変わってきた 

 蓮風 産経新聞大阪本社のサイト「産経関西」に僕のコーナーできた、ということで、まず小山先生と、お話しして、それを載せてもらいたいと思いました。今回、対談できることを光栄に思います。

 

 小山 最近、感じるのは、西洋医学は唯我独尊、鍼なんかきくものか、といってたのが、別の方法も試してくださいというようになったね。10年くらい前からそれがあきらかになってきた。東洋医学でも実際に効果がある例が新聞や、雑誌の記事にほうじられていますね。

 

 蓮風 僕が21歳のとき、堺で開業したころはね、もうドクターが偉くて、鍼灸師なんか医療の仲間にいること自体がおかしいというような時代でした。それと比べると今はドクターの考えもずいぶん変わって見方も変わったし、患者さんも西洋医学もあるし東洋医学もあるんだという時代になりましたね。

 

 小山 昨年、アメリカに行ったとき、えらい若い医師がまじめに東洋医学をやっていた。鍼を、どこに打てば効くのかを、若い人たちが一生懸命やっている。たまたま、そういう人に出会ったのかもしれませんが、そういう感じがひろまってきたと思う。「最近、元気になったね」、「Acupuncture(鍼)やってるから」、というような会話を聞いたりね。やっぱり科学一辺倒みたいな現代医療がずいぶん崩れてきているんじゃないですか。

 

 蓮風 伝統医学の立場からすると、かなりいかがわしいのもある。いかがわしいものの中に現代文化の歪(ゆが)みみたいなものもあって、たとえば麻薬中毒者に耳鍼をやって止めさせるのとか。そのほうが薬を使うよりマシだから、ということで実際に実験をやっている。しかし、耳に反応点があるからそこに刺す、というようなのは伝統医学にはない。脈や舌を診て東洋医学的な気の歪みをつかまえて、それを治すことにこの医学の原理があるわけで、麻薬患者に耳鍼というのは形を変えた西洋医学なんであって、我々専門家としては違和感があるんだけれども。

 

 小山 だけど、それが効くことに注目して、やり始めている。

 

 蓮風 そうそう。その徐々に浸透しているという点ではいいんだけれども、耳に鍼すれば効く...というふうに一般の方たちが考えて、それを東洋医学なんだと思い込んでしまうのは危険な部分があるなと思うんです。我々が専門家としてブログなんかを書いて、それは違うんだ、本当の東洋医学はこうなんだ、と叫ばなければいけない時代に来てるのだと。

 

 小山 それはわかるんです。これをやれば元気になるとか、ガンが治るとか、美人になるとか(笑)。

 

 蓮風 最近は美容鍼とか流行りだしてね。

 

 小山 でもね、始まりを考えると、やっぱりそういうことからやっていたし、アボリジニがそういう体系を考えていたか、理論的に整然と考えていたのかというのとは別でしょう。ヒーリングパワーといって手をかざしてる写真ばかりの写真集があるけれども。

 

 蓮風 そのあたりの民族医学的な部分も、東洋医学も元々そうだったんですよ。たとえば足が痛くなったら、鍼を刺したり、血を出したりしてね。循環を良くする。それがだんだん複雑な病気を治そうということになってくると、そこに経絡とか陰陽とか気とか医学の原理みたいなものが出てきて、そういうものがベースになって、哲学的になって、高度に発達していった。民族医学にもいろいろあって、民間療法的なもので収まっているのもあれば、高度な理論をもったものもあるし。その辺はどうですか?学問的立場から見て。

 

 小山 (オーストラリア先住民の)アボリジニの社会に行くと、あそこは文字がないから、理論は発達しない。すべてが一人の頭の中に入っている。天才がいるんだね、きっと。ものすごく鋭い人が。トレーニングの価値は認めるけど効くけども、ひょっとしたら天才がいるような気がするね。

 

「天才」の技をどう伝承するか
小山・蓮風1

 蓮風 それはね、東洋医学およそ三千年の歴史の中を見ても、みんながすごいわけではなくて、何百年か千年単位で突如、天才が現れて、学問を進展させたり、医療技術を向上させたりしているんです。特に学問的に成立しなければ、天才という存在が相当まとめ役となっているんじゃないでしょうか。

 

 小山 彼らの社会では、若い男が、頭痛をうったえる患者に、ピッピッと髪の毛を持って引っ張ると、スッと痛みが取れる。どこで効いてるのか、精神的に効いてるのかわからないが、これはすごい!という人がいるんですね。

 

 蓮風 そういうのは滅多にいないでしょ。何千人に一人とか。れども、僕は そうではなしに、医学は単数ではダメなんだと。やはり複数で、数百人。限りなく名人に近い人たちをなんとか学問でつなげたいと思って試行錯誤してきたのが北辰会で、ある程度成功した部分もあるしまだダメな部分もあるけれども、方向性としては間違ってなかったなぁとは思うんです。

 

 小山 そう。天才みたいなの、奇跡の人みたいなのがいますね。ああいう社会はね、記録社会じゃないから、文字がないから、天才がどうだったというのが体系化して伝わっていかないと考えるんです。

 

 蓮風 そこなんです。それがさっきから言う、同じ民族医学とか伝統医学といっても学問的体系をなすやつと、そうでないやつがある。どっちが優劣というのじゃなしに、学問的になっていくとある程度普遍性が出てくる。北辰会も今までてんでバラバラだったのが、まとめて学問体系にしたから伝わるんであって。昔は一人の名人がいたら良かったけれども、僕はそうではなしに、医学は単数ではダメなんだと。やはり複数で、数百人。限りなく名人に近い人たちをなんとか学問でつなげたいと思って試行錯誤してきたのが北辰会で、ある程度成功した部分もあるしまだダメな部分もあるけれども、方向性としては間違ってなかったなぁとは思うんです。〈続く〉



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注釈・肩書は当時のものです(初回公開日2011年8月7日)

国立民族学博物館の小山修三名誉教授


中国を研究する杉本雅子・帝塚山学院大教授


九大大学院医学研究院教授・外須美夫さん


薬師寺執事・大谷徹奘さん


春日大社・岡本彰夫権宮司


医師で僧侶の佐々木恵雲さん


関西外国語大学名誉教授・小山揚子さん


鍼灸ジャーナリスト・松田博公さん


児童文学作家、ひこ・田中さん


歴史地理学者の川口洋・帝塚山大学教授


正倉院事務所長の杉本一樹さん


ドクターシリーズ

和クリニック院長の村井和さん


山添村国保東山診療所長(現タケモトクリニック院長)・竹本喜典さん


吉祥院病院在宅医療部長・沢田勉さん


藤原クリニック院長・藤原昭宏さん


小児科医・鈴村水鳥さん


倉敷中央病院初期研修医・笹松信吾さん


医師で僧侶の佐々木恵雲さん(前シリーズでも登場)


小児科医・児玉和彦さん


東京有明医療大・川嶋朗教授

 

 


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初回公開日 2011年8月12日

 今月7日からスタートした新企画「蓮風の玉手箱」の第2回目を14日から掲載します。前回の序文に続いて玉手箱から飛び出してくるのは国立民族学博物館名誉教授の小山修三さんと藤本蓮風さんの対談です。

 文化人類学者と「鍼」との邂逅で何が起こるのか?融通無碍、変幻自在のお二人の会話を随時お届けしていきます。お楽しみに! 

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小山修三(こやま・しゅうぞう)
文化人類学者。1939(昭和14)年、香川県出身。1976年、国立民族学博物館助教授となり、同教授を経て2002年から名誉教授。04年から大阪・吹田市立博物館館長をつとめている。『狩人の大地―オーストラリア・アボリジニ―』『美と楽の縄文人』『森と生きる―対立と共存のかたち―』など著書多数。『梅棹忠夫 語る』の聞き手もつとめた。



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初回公開日 2011年8月5日
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鍼灸師で伝統鍼灸の臨床研究や後進の育成をすすめている「北辰会」代表の藤本蓮風さんが「鍼(はり)」の世界について語る「蓮風の玉手箱」が7日から「産経関西」で始まります。45年以上にわたって多くの患者に向い合ってきた経験をもとに鍼を通じて人間の不思議さにも迫るコーナーです。

 

 西洋医学の有効性もみとめながら「それ以外にも治療法があることを多くの人々に知らせたい」「民間療法と鍼灸を混同するような誤解はときたい」という蓮風さん。

2010年6月からブログ「鍼狂人の独り言」を開設し人気ブログランキング(http://blog.with2.net/)の医学のカテゴリで1位が“指定席”状態になっています。匿名での批判など、ブログでの発信にはさまざまなリスクもつきまといますが、「マーケットの品質の質を向上させるには消費者が賢くなること」というセオリーを実践。この「行動あるのみ」という思いが「産経関西」でも展開されることになりました。

 

 この新コーナーは蓮風さんのコラムのほか国立民族学博物館の小山修三名誉教授ら学識者との対談などさまざまなスタイルで構成されていきます。

 玉手箱から何が飛び出すのか?ご期待ください。

 
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小山修三さん(左)と談笑する藤本蓮風さん=奈良市学園北の藤本漢祥院


藤本蓮風(ふじもと・れんぷう) 北辰会代表、藤本漢祥院院長。昭和18年大阪市生まれ。関西鍼灸柔整専門学校(現・関西医療学園専門学校)卒業後、同40年、堺市で独立開業。同54年「北辰会」を設立。森之宮医療大学特別講師などをつとめているほか同会と学術交流をしている中国・広州中医薬大学で平成19年、同21年に特別講義を行うなど国内外で後身の指導にあたっている。『鍼灸治療 上下・左右・前後の法則』『臓腑経絡学』『東洋医学の宇宙』など著書多数。近著に『鍼狂人の独り言』。


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初回公開日 2011.8.7

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 私は鍼灸師。十四代続く伝統を受け継ぎ、半世紀近くこの仕事についています。様々な病を治しました。多くの方たちは、私が触れた経験についてほとんど知られていないと思います。 

 読者の皆さんは、えーそんな病気が鍼で治ったの、とびっくりなさることも多いのではないかと思います。近代西洋医学はドンドン発展しあらゆる病撲滅に大いに努力を払っています。

 でも、病が癒えず、困っている人は意外に多いのです。だから、私達鍼灸師の門を叩き何とかならないかと相談に見えられます。

 ここにまた色々問題があります。西洋医学の場合は医学部を卒業し医師国家試験をパスした人達で、患者さんはある程度「均一化」した医療が受けられます。

 ところが、東洋医学、鍼灸医学の場合は、鍼灸師国家試験を突破した人が鍼灸師となります。ですが、歴史的にも、現実的にも多くの問題があり、医療としての「均一化」ができていません。

 ここに患者さんの悩みが生じます。
「何処の鍼の先生にかかればよいのか」 「自分の症状を治してくれるのはどんな鍼灸師なのか」

 
 そこで、筆者は思います。

 この業界も遅ればせながら徐々には改善されてきており、その上に、業界団体を引き上げるのも大切です。

 また、その半面に利用者である患者さんに大きくアピールし、患者さんに鍼灸医学を見つめる確かな「マナコ」を身につけていただくのも大事かな、と考えます。

 このコーナーの目的は実にこの点に存在します。とはいえ、玉手箱ですから、何が飛び出してくるかわかりません。どうぞご愛顧を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。   蓮風


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藤本蓮風(ふじもと・れんぷう) 北辰会代表(現会長)、藤本漢祥院院長。十四世鍼医。昭和18年大阪市生まれ。関西鍼灸柔整専門学校(現・関西医療学園専門学校)卒業後、同40年、堺市で独立開業。同54年「北辰会」を設立。森之宮医療大学特別講師などをつとめているほか同会と学術交流をしている中国・広州中医薬大学で平成19年、同21年に特別講義を行うなど国内外で後身の指導にあたっている。『鍼灸治療 上下・左右・前後の法則』『臓腑経絡学』『東洋医学の宇宙』など著書多数。近著に『鍼狂人の独り言』。

 

new! PHP人名辞典に掲載されました(2019)

 

ブログ「鍼狂人の独り言」 2010年より毎日更新中!是非ご覧ください。

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