蓮風の玉手箱

このサイトは、2011年8月7日~2015年8月29日までの間、産経関西web上において連載された「蓮風の玉手箱」を復刻したものです。鍼灸師・藤本蓮風と、藤本漢祥院の患者さんでもある学識者や医師との対談の中で、東洋医学、健康、体や心にまつわる様々な話題や問題提起が繰り広げられています。カテゴリー欄をクリックすると1から順に読むことができます。 (※現在すべての対談を公開しておりませんが随時不定期にて更新させていただます・製作担当)

2019年9月、北辰会会長・藤本蓮風の新刊書籍が二冊出版されました。

「舌鑑弁正 訳釈」

内容紹介

舌診学の歴史的頂点にあり、鍼灸臨床における診断学の優れた書籍である1894年刊の『舌鑑弁正』。本書は、白舌、黄舌、黒舌、灰色舌、紅舌、紫色舌、黴醬色舌、藍色舌、妊娠傷寒舌の全149舌について、底本とする王文選輯録の『傷寒舌鑑』を弁正(是非を明らかにし、誤りを正す)した原文に、口語訳と弁釈を附した書である。

舌鑑弁正 訳釈
口述/梁玉瑜  記録/陶保廉
杉本雅子/監訳  藤本蓮風/訳釈
たにぐち書店 ¥4000(税別)







「筆跡に見る心の襞(ひだ)」

内容紹介
「本当の鍼をする秘訣のひとつは、患者の心の問題を大事にすること」、それを手段として、筆跡に注目した著者。多面的な観察と適格な治療の実践に役立たせるべく、線の太さや筆圧、丸のつけ方などに現れる患者の心理を解き明かす。

筆跡にみる心の襞
藤本 蓮風
たにぐち書店 ¥1500(税別)






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「舌鑑弁正 訳釈」は著者が20年以上かけて翻訳した珠玉の一冊です。
1983年に発刊された「舌診アトラス」と併せて、是非ご覧になってください。

舌診アトラスはこちら
針灸舌診アトラス
藤本 蓮風
緑書房
1983-04-01








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杉本一樹さん(写真右)と藤本蓮風さん=奈良市学園北、藤本漢祥院

 「蓮風の玉手箱」は今回が宮内庁正倉院事務所長の杉本一樹さんと鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の最終回となります。前回は古代中国思想の「五行」についての古い資料が偽物だと報道されたことに話題が及びました。しかし、正倉院の宝物には疑義を差し挟む余地はないようでした。杉本さんとの対談の最後は、その話の続きから始まります。(「産経関西」編集担当)

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 杉本 (正倉院の宝物が)出て行くのは論外ですけど、中に入れないっていうのも、一つのポリシーとなっています。

 蓮風 まさしく、セキュリティーをしっかりやらないかん部分なんでしょうけれども。研究によって中国の文献に対する評価がどんどん変わっていってるみたいなんですが、我々は20歳代に五行について考えた時、『尚書』の「洪範篇」が一番土台なんだと学んだし、時代が進んでどんどん文献が偽物だと言われると、何を根拠にして話して良いのか…。

 杉本 (資料に目を通す)これは…またえらく簡単に結論づけて、真か偽かということで…(笑)。

 蓮風 これは…古書のこういった文献研究としては、中国は相当進んでいるんですか?

 杉本 古典研究は…。

 蓮風 まあ、本家ですからね。

 杉本 国家的なプロジェクトとしてね、お金をかけてやってますけど…。

 蓮風 日本でも、そういうプロジェクトは大分しっかりしたものもある訳ですか?

 杉本 日本はそちらの方への予算の掛け方は中々…。

 蓮風 まだまだ、お話をお聞きしたいんですが、先生もお疲れでしょうし…。

 杉本 いえいえ。出て来て、話を全部正倉院にむりやり繋げて結局、宣伝ばかりになりました。

 蓮風 いや、ぴったり合うんですわ。

 杉本 何かそういうお話でお役に立てるようでしたら…。

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 蓮風 いやいや充分、充分。正倉院の建物自体を身体、その中に収納保管されているいろいろな遺産や宝物が、五臓六腑であったり肌肉、筋、骨。そして、建物内の空気や湿度が気血に相当し、空気の入れかえや風を入れてあげることがすなわち、気血が円滑に循環している姿と捉えると、共通点があるように思われますね。

 宝物をあるがままの状態でより長く保存するためには、外界の環境の影響を受けてもなるべく左右されないだけの内部環境が大事である、と。これは、我々人体にあっては、陰陽を整える力、つまり、自然治癒力を大いに発揮できる状態に相当すると思うのです。宝物は時間とともに劣化していきます。我々の肉体も同じです。そのなかにあって、より美しい健全な状態をある程度一定に保ち長持ちさせる働きこそが、我々人間においては気血の流れが流暢であることに相当すると思うのです。

 そのなかでも特に「気」の働きが主となり「気」が重要なポイントになる、ということと類似していると思います。正倉院の宝物も、杉本先生のように、大事に大事に感謝の想いをもって扱ってくれる人がいて、そして、多くの観客の方々が興味深くじっくり観て古代に思いを馳せることによって、その宝物の価値がより高貴に保たれ続けるのだと思います。それと同じように、鍼灸医学の世界においては、術者側が「気」というものを大事に扱って、患者の「気」の状態、肉体面も心の面も魂の有り様もすべてあるがままを診て何らかの術を施すわけです。鍼を受けた方々も、病苦が少しでも和らぎ、自分自身の生きてきた歴史の中で関わってくれたすべてのものに感謝の想いをもってわだかまりなく心安寧に過ごすことができれば気の流れがますます安定し、より健やかに“数倍生きる”ことができるのではないか、と思います。そういう意味で、先生の正倉院でのお仕事と相通じるものがあると思いますよ。

 杉本 そうですね。

 蓮風 ありがとうございました!

 杉本 はい。どうも失礼致しました。<終>



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次回からは医師で鍼灸治療も行なっている「和クリニック」院長の村井和さん=写真=との対談が始まります。
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 村井和(むらい・かず)さん 和クリニック院長(内科、東洋医学)。1969(昭和44)年、和歌山県生まれ。神戸大学医学部卒業。同大学医学部付属病院、兵庫県立尼崎病院勤務を経て出産・育児休業中に藤本蓮風さんが代表理事をつとめる鍼灸学術研究会「北辰会」に参加。2003年から勤めた和歌山生協病院の内科で鍼灸を併用した治療に取り組む。2011年11月「和クリニック」(和歌山市吹屋町4-12-2)を開業した。北辰会正講師。


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藤本蓮風さん=奈良市学園北の藤本漢祥院

 鍼(はり)の力を探る「蓮風の玉手箱」をお届けします。宮内庁正倉院事務所長の杉本一樹さんと鍼灸師の藤本蓮風さんの対談も終盤に近づいてきました。どのようにして東洋医学を未来に伝えていくか、という課題について考えた前回の続きです。蓮風さんが代表となって臨床研究や後進の育成を行なっている一般社団法人「北辰会」には様々な動機で伝統鍼灸の技や文化を探求する方々が集まって現在、そして未来の医療に活かそうと研鑽を積んでいます。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 我々は鍼灸師の育成もすすめていますが、若い医師が関心を示して意外とついてきてくれるんです。

 杉本 うん。

 蓮風 彼らは医学部でしっかり勉強して、それから研修医を経て一人前になっていく。現場で経験を積んでいくと、西洋医学がどうしても乗り越えられない部分に突き当たる。そんな場合(鍼灸に)臨床価値を感じてるみたいです。実験室でやってる基礎研究などではそうでもないけど、実際に臨床をやっていきますと中々スッとは治らない。例えば、子供のネフローゼとか。そういう人たちに、我々はこの「鍼は安全で、比較的上手く適切に術を施すと効くんだよ」という話をすると、ついてくるドクターも結構多いんですわ。

 杉本 それは非常に有効だと思いますね。我々の業界と言いますかね、文化財の関係でも、やっぱり文化財を扱っている美術館・博物館で、扱っているような人たちに、「正倉院でこんなことやってますよ」って言うと、やはり沁み込み方が違うんですね。

 蓮風 なるほど。

 杉本 やはりそれなりに自分たちの所で抱えてる課題なり何なりがあり、それをすぐに解決するための特効薬にはならないんですけど、ひとつ、ちょっと見方を変えて…。

 蓮風 うん。

 杉本 ヒントにしてもらえるところはあるんですね。

 蓮風 そうすると正倉院の、ああいう御物…宝物を研究する学者先生たちも(正倉院に)どんどん出て来てもらえるわけですか?

 杉本 そうですね。学術的な価値ってのは非常に高いし、何しろ他にあまりないものが正倉院にあるということでね、それは非常に大事にはされてるんですけれど。まあ、学術的な価値っていうのも、いろんな形で伝えることができる。例えば写真。その写真を使いやすくすれば、かなりのところまでは…。高かったハードルが下がるしその品物を実際に手にとってみなければ分からないというのはごくごく限られた範囲になりますので。我々はその実物を「はい、どうぞ」とご覧に入れるってことはまずありませんけれど、その代り既に調べて分かってること、あるいは撮った写真、そういう情報は、もうなるべく広くお伝えしようという事で、インターネットに載せたりしているわけです。
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 蓮風 なるほど。話はまた変わるんですけれども、古代の中国思想の中で五行という考え方がありますね。

 杉本 ええ。

 蓮風 木火土金水があって、それから世界はできてるんだという…。それは相互に影響し合って、この世の中は動いてるんだという考え方なんですけども。その五行についての、一番古くて確かな資料、ということになると…私も調べたんですけど、『尚書』(『書経』の古名)の洪範篇というところに実際は書いてあるとされている*1わけですよ。ところが、そういう古い書物についての研究が進展しますとね、現代では「あれは偽物だ」という中国の学者さんの意見も出てきて、それが圧倒的に説得力を持ってくると事実だとされてきたことが怪しくなってくる*2。五行についても専門書が色々とあるんですが、その根拠になっている書物が偽物だったとか何とか言われると、学問にポッカリと穴が空くように感じるのですが、同じようなことは先生の所ではないですか?

*1:吉野裕子著『五行循環』(人文書院、1992年)による。
*2:2012年1月5日、「清華大学所蔵の竹簡研究の結果『古文尚書』は偽物であることが判明した」というニュース
が中国のウェブサイトを通じて報じられた。

 杉本 そうですね。物としてそこにある、今、現にあるというものは、そのものがそこにあるという、そのこと自体には疑いがないと。

 蓮風 ないわけですね。

 杉本 これがまあ、正倉院のひとつのありがたいところで…。

 蓮風 うんうん。

 杉本 先にたとえば、偽物が作られたとして、それが自由に出たり入ったりするような環境にあると、もう何が正しくて何がダメか…っていうスタンダードがね、非常に混乱するわけですけれど。

 蓮風 そうなって来ると、先ほどの話と関わって、やっぱり…頑(かたく)なに守らなきゃいかんものがかなり大きいですよね。<続く>


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杉本一樹さん=奈良市の藤本漢祥院

 鍼(はり)の力を探る「蓮風の玉手箱」は、宮内庁正倉院事務所長の杉本一樹さんと鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の8回目をお届けします。1200年以上前から数々の宝物を伝えてきた正倉院は気候の変化だけでなく時代の風雪にも耐えてきました。つまり苛酷とも言える時期もあったはずですが、それはどのように影響しているのでしょうか?今回はそんな話題からお話が始まります。

(「産経関西」編集担当)

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 杉本 苛酷な時期を含めて、正倉院が恵まれていたところとなる訳です。ひとつは関心があんまり向かなかい時は100年以上、蔵が開かなかったという時もあるし。かといって、あんまりほったらかしにしておかれると、例えば建物が雨風でやられて、雨漏りして、最後には、中の物が全部なくなっちゃったとか…。

 蓮風 うん。

 杉本 そういうこともなく、適度に放っておかれ、適度に関心を持たれてというようなことを、恵まれた、と表現できるっていうことです。

 蓮風 正倉院には年に何回か虫干しみたいなものを…?

 杉本 今は鉄筋コンクリート造りの倉庫に入ってますので、風入れという意味ではしなくていいんですけれども、やはり宝物の無事を確認するために点検を…。毎年毎年、蔵を開けて全部の物に風を当てていたんですね。

 蓮風 昔は、あの…校倉造式の、いわゆる上手く自然と調和して、板間のようになっとったからやっぱり、虫干しみたいなものはあんまりやらなかったんですかね?

 杉本 いえ。

 蓮風 やっぱり、やったことはやったんですかね?

 杉本 ええ。あれは明治の10…何年からか後はね。明治16年だったかな。

 蓮風 はい、明治以降は…。

 杉本 ええ、明治16年以降は、毎年一回定期的に。

 蓮風 定期的にされていると。

 杉本 ええ。

 蓮風 それ以前はあまり分からないですね。

 杉本 そうですね。その前はむしろ、開ける時のほうが珍しかったんですよ。開けるタイミングは何かって言うと、やはり雨漏りがしだしたとか、雷が落ちたとか、盗賊が入ったとかそういうようなとき。

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 蓮風 正倉院も色々な御物、遺物を運んで現代に伝え、そして未来に伝えていく訳なんですけども、東洋医学も一つの医療文化として、単なる過去のものではなく、現実に今に生きて未来に伝えることが非常に大事なんです。

 杉本 そうですね。

 蓮風 はい。そういったものをなんとかね、我々は何とか世に広めたいという願いでおる訳なんですけども。先生がおっしゃるようにやっぱり宣伝というか、外へもっともっと、こうなんだよ、という動きを強めないかんですかねぇ?

 杉本 宣伝というと聞こえがちょっと…。

 蓮風 ははは(笑)。聞こえが悪い?

 杉本 いや(笑)。世の中に、大して価値のないものを…こう…ちょっと吹っかけて、というようにも聞こえますから…。そうじゃなくて、これだけいいものですからね、必要としている人達っていうのが、潜在的には多いと思うんですよ。そこに向けて、情報として届きやすくする手法は必要かと思いますね。<続く>


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藤本蓮風さん=奈良市の藤本漢祥院

 鍼(はり)の力を探る「蓮風の玉手箱」をお届けします。鍼灸師の藤本蓮風さんが正倉院事務所長の杉本一樹さんをお迎えした対談の7回目です。これまでの杉本さんのご説明で、正倉院や、その宝物は時間を超えて存在する過去の遺物ではなく、現在も生き続けていることがわかったような気がします。ただし“超高齢”。おつきあいの仕方が大切になってくるわけですね。歴史学と医学には似た部分も多いようです。逆に考えると同じ地球の上のことなのですから似てるのが当然で、あまり几帳面に分類しようとすると無理が出てくるのかもしれません。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 ある意味、日本ではメジャーとはいえない鍼灸などの東洋医学が今後発展するにはどうしたらいいでしょうかね?

 結局のところ、患者さんを治療して、その実績で信用を得て、世の中に広がっていくというのが一番の基本でしょうけど、もうちょっと幅広くというか、力強く前進できる方法はないでしょうか?

 杉本 難しいですね。例えば対外的に宣伝をうってね。それにもプラスの面とマイナスの面とあると思います。正倉院の展覧会も、ずいぶん効果があって最近は多くの方が来てくださるわけですけど、それによる保存上のデメリットもゼロではない。よく関係者の間では、これをできるだけ少なくしなきゃいけないというようなことは話しています。発展というと難しいですね。ただ、こちらの場合は、その根本の考え方をよく分かっておられる人を育てる、ということを非常に重視している。この点は、それでいいと思います。

 蓮風 一方、薬でない薬、サプリメントも非常に流行っています。僕の目から見ますとあれはほとんど薬ですから、乱用されるのは非常に危険だと思うんです。分かって使えばいいけれど、我々から見とってもどういう目的でやっているか、なんでこんだけのもんをようけ入れなあかんのか、よく分からんことたくさんあるんです。例えば、貝のシジミだけのエキス。その成分だけを摂るんなら分かるんですが、何かもうあれこれ入れて万能薬のように言うておる。非常に危険だと思うんですが。先生はどうですか? サプリメントみたいなものは。

 杉本 ねぇ。まぁ、家にありますけれどもね(笑)。

 蓮風 はははっ(笑)。正倉院にはそういうサプリメントみたいなものないですか?

 杉本 そうですね。正倉院にはないですね。ただし、先ほどの薬の名前を、あとでよくご覧になったら、これはサプリメントだというものも…。人参なんてのがありますね。元気になって、害にならないんじゃないですか?

 蓮風 そうですね。そういうところがいい面とそれこそ危険な面があるんですよね。東洋医学の「虚実」の観点で「虚証」という人間の身体の抵抗力のある程度なくなった状態には非常に効果があるけど、逆に抵抗力があって、むしろ邪気(身体に病気を引き起こすもの)が身体の中で大勢を占めている場合に人参などの補剤(気血を増す薬物)を安易に使うとかえって悪化する、というのが東洋医学の常識なんですよね。人参はサプリメントに入っているので非常に危険だと思ってるんですよ。

 杉本 それは危険ですね。もう少し啓蒙が必要ですね。

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蓮風 正しい医療を示していかなあかんですね。昔はけっこうクチコミでね、患者さんが「あそこはいい」とか「悪い」とか言ってくれたものです。今はネットですね。ネットもいい面もあるんだけども、ネットを使って変な書き込みをする者もいますね。ツイッターなどのSNSやネットの掲示板なんかで医療について、あれこれ意見を言っている人もたくさんいます。良い面もあるんだけど、人を迷わす面もありますよね。サプリメントの問題も、簡単に薬に近いものが手に入って使える良い面はありますが危険な部分を孕(はら)んでいると思うんですよ。やはり何事にもメリットがあればデメリットもある。

 杉本 (展覧会のプラス・マイナス面の問題にしても)本当に「物のため」ということでしまい込んで、「全然見せません」という選択もあるのかもしれないけど、(大事なので公開しないとなると)今度は、見た人が受ける感動みたいなものがなくなってしまう訳ですね。そうすると、「大事」「大事」という、言葉だけのものになってしまう。

 蓮風 うん。

 杉本 やはり、見てもらって、「さすがにいいな」と思ったり、「なんだ…大したことない」と思う人もいるかもしれないし、そういう人も含めて、まあ今、見ることができる人たちに機会を作って見てもらうというのも、やはり、先へ繋げる「種を蒔く」という、ひとつの行為だろうと思うんですね…。

 蓮風 なるほど。

 杉本 結局まぁ、限りある生命ですからね、物自体も。やっぱり経年でどんどん丈夫になっていく訳はないわけで、ゆっくりゆっくり衰えていく。じゃあ、その衰えていく中で、今の人たちがどれくらい取り分として、見て、それから後は未来の人たちに残しておく分も取っとかなきゃいけないっていう、そのバランスが「保存と公開」という言い方で、絶えず頭にあるわけです。<続く>

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