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対談する竹本喜典さんと藤本蓮風さん=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の可能性を探る「蓮風の玉手箱」は、鍼灸学術研究会「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんと、医師で山添村国保東山診療所長の竹本喜典さんとの対談の7回目をお届けします。大学の医学部で漢方の授業が行われるようになって東洋医学への理解も進んできています。とはいえ、まだまだ様々な「壁」があるようです。終盤に入ってきた今回は、そんなお話が中心。僻地でトータルに患者さんと向き合う竹本さんは東洋医学の有効性を実感していらっしゃるようですが、現代日本の医療のなかで大きな存在感を獲得するには色々な課題があるようです。(「産経関西」編集担当)

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診察中の竹本喜典さん=2013年10月11日、奈良・山添村国保東山診療所

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 蓮風 大工さんが憧れだということをおっしゃってましたけど、先生の場合、単なる大工じゃなくてもっと有機的な全体をみておられるんだろうなという感じがしましたがね。

 竹本 田舎では(有機的な全体を)見ざるをえなかったので、そういう意味では、いい形だったのかなと思います。

 蓮風 感性的にもそういうものをもっておられると思いますね、先程からずっとお話を聞いていると。

 竹本 ありがとうございます。みんな持ってるんじゃないかなあと思うんですけれども、なんか世知辛い世の中でどうしても「マニュアルだけやっといたら問題ないねん」とか「余計なことやったら仕事増えるだけやん」とか、そういうのですごく足踏みしてるんやろうなと思います。

 蓮風 今、どうですかね。鍼を中心にやっておられる疾患はどういう疾患…?

 竹本 僕がもともと整形外科というのは、患者さんたちは知っていますので、田舎のメジャーな疾患としてあちこち痛いというのが多いんです。

 蓮風 痛みの疾患をね。

 竹本 痛みの疾患が多いので、その痛みをなんとかしてあげたいということで、鍼をすることが多いんですけども、実際には心の問題みたいな部分をターゲットにする方が、鍼も効きやすいような気がします。それが自分の中ではまりやすいパターンかなあと思っています。

 蓮風 うーん、なかなか面白いなあ。どんどん鍼をやっていただくとね…。まあ儲からんかもしれんけどね。鍼というのは儲からないんですよね。

 竹本  漢方・鍼は、儲からないです。時間かけて丁寧にやってもお金にはなかなかならないので。

 蓮風 ならないですね。えー、どうですかね。「北辰会」と関わっていろんなことを教わっておられると思うんですけれども、教育の仕方なんかどうですか? 先生なんかはシステムがきっちりした医大の中で生理学を学んでこられたと思いますけれども、東洋医学の教育はどうですか?

 竹本 東洋医学の教育は、まだなかなかちゃんとできていないのが実情だと思います。やっと(医学部に)授業のコマができて、まずは喜んでいる所ですね。それでも東洋医学なんて怪しいと思てる人も沢山いらっしゃいます。(非西洋医学的なものに対する)アレルギーをとるというんですかね、そういう役には立っているかなあと思います。東洋医学の教育としては、中医学の教科書なんかはしっかりしているので、あれを基礎としてとても優れていると思うんですが、小さいコマ数の中では絶対できないんですよ。

 蓮風 できない、できない。

 竹本 できないんですよ。入り口として、僕は東洋の哲学的なところがおもしろいと思うので、興味をもってもらえる人が増えてほしいんです。地域医療実習というのがありまして、診療所にも研修医とか医学生が来るんです。鍼とか漢方とかやっている診療所なんてほとんどありませんので、興味もってきてくれた人には、どういうものかを見てもらって、魔術的なものじゃあないねんよと。

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 蓮風 そうそう。我々がもう今から50年程前に鍼をもった時は、ほとんど魔法みたいに思われてた。まじないとかね。だから重い病気を患ってやって来て「先生、鍼を以前に受けたけど治れへんかった」と言うので、「何回やった?」と訊くと、1、2回しかやってない。まじない程度に考えている人が多かったですね。さすがに今はそうでなくなってきましたね。

 竹本 マジカルとしか思えないような技も見せてもらうんですけど、そうじゃないねん、ちゃんと理論があって、考えてやるとちゃんとできる学問なんやということをなんとか伝えたいなあと思って、お話させてもらって持って帰ってもらうようにはしてるんです。

 蓮風 そうですね。今、国公立の特に国立の医学部では、漢方の講義ができましたね、講座が。ところが鍼灸の講座ができていない。

 竹本 そうですね。

 蓮風 それだと偏っているんですよね。漢方やったら鍼灸もあるわけで。「北辰会」では、それにあった教科みたいなのをボツボツ書いているんですがね。

 竹本 すごいのができますよね。

 蓮風 そういうことでなんとか世の中に普及させたいと思うんですけれども…。

 竹本 政治的なものですかね…。それも大きいように思うんですけども。

  少し話が飛びますが…。

 蓮風 どうぞ。

 竹本 学生の時に実習先で「トリガーポイント」って言うて、「ここ痛いねん」という所に麻酔を打つわけですよね。何カ所か打って、痛いのとれたということが起きるんですよね。そら麻酔打ってるからやんかということなんですが…(笑)。僕は「え?、こんなにひどいことすんねや」と思ったんですね。関節への注射でもそうですよね。そのころは、基本的には麻酔は入れないですけれども、入れている時もあったんですよね。「そら痛いのとれるわ。麻酔やし…。それで治療やというのはどうなのよ」と思ってたんです。

 でもだんだんやっていくと、確かにトリガーポイントでも麻酔は数時間で切れるはずやのに、1週間ぐらい楽やったりするわけですよね。なんでかなあと思ってると、中に麻酔やのうて、生理食塩水でもええねんて言うて、薬効はない生理食塩水を注射する人もいる。水でもええんか!、ほんだらもうこれ刺激だけでもええんやんかという風になって、麻酔科の先生がちょっと鍼に興味もたれたりとか、痛みのペインクリニック的な部分で鍼にだんだんシフトしていくという方向性が鍼としては入っていきやすいのではないかなあと思っています。〈続く〉