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笹松信吾さん(写真右)と藤本蓮風さん(同左)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。前回から倉敷中央病院初期研修医(対談当時)の笹松信吾さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談が始まりました。今回は笹松さんがなぜ、西洋医学を学びながら東洋医学にも関心を持ったのか、その理由について話してくださっています。外科と内科との関係にも言及されており、東西の両医学がうまく協力関係を築けるヒントがありそうです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 大学を中退されるなどドクターの大学(札幌医科大学)に入るまでに時間がかかっていますけど、その間、迷いはなかったですか?

 笹松 迷いはありました。まず、どうして時間がかかったかという話なんですけど、元々医学部をめざして勉強をしていたんですが、受験という壁があって、なかなか思う通りにいかなかった。そこで一度、医学部を諦めて心理学が学べる大学に進んだ。やっぱり医学部の受験というのは難しかったということですね。

 蓮風 そうですね。「玉手箱」に登場していただいている先生たちも、そんな簡単にスッと入っていないですね。ほとんどね。だから、それは当然と言えば当然だけど。「もうしんどいからやめたろ」という気はならなかったですか? 医学部に入るまでに。

 笹松 そうですね、心理学の大学に入っても医者になりたいという思いが捨てきれずに大学に通いながら毎年受験をしていたんですけど、途中でこのまま心理学の道を進んでもいいかなという思いには何回もなりました。ただ最初に自分でやりたかった仕事ができなくて、未練が残ったままで、果たして満足した人生を送れるんだろうかということを何度も考えて、この受験を最後にしようと思った年に、たまたま合格することができました。

 蓮風 うまくいったんですね。一時、広島大学に在籍しておられたんですね?

 笹松 広島大学の総合科学部というところに在籍しておりました。

 蓮風 それは医学と関係があるんですか?

 笹松 そうですね。色々なことを勉強できる学部なんですが、心理学を学ぶことを選んだんです。直接医学には関わらないのですけれど、人の心を研究する学問ということで、医学に近いところに立てるかなということを考えました。

 蓮風 なるほど。消化器外科専攻という風に聞いておりますが、そうですか?

 笹松 はい、そうです。

 蓮風 これは何か意味があるんですか? 僕はね、最初にお会いした時、内科向きの先生やなとつくづく思っとったんやけど、消化器外科ということで、ちょっと意外性があったんでお話を聞かせて頂きたい。

 笹松 僕も医学部に入ったころは、子供のときに小児科の先生によくお世話になったということで、小児科医になろうかなと思っていました。ただ実際に勉強していくうちに小児科はちょっと向いていないのかなと(笑)。子供の相手をするのが苦手ということもありまして。色々な科を回って勉強させてもらううちに、手を動かしているのが楽しいということに気付きました。他には、昔から思っていたことの一つに、目の前で倒れている人を救える医者になりたいというのが頭にありまして、そういった中で一番近いものは何かなと考えると、外科かなということで、選びました。

 蓮風 そうですか。
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 笹松 また、学生の途中から東洋医学を勉強していましたので、内科的なことは東洋医学でやって、東洋医学でやりきれないところを外科でやろうかなという、ちょっと欲張った思いもありまして。

 蓮風 その発想は確か『三国志演義』にも出てきた中国・漢代の華佗(かだ)という人につながりますね。華佗という名医の専門は、元々は外科なんです。だけどその前に内科的に治すことはないかということで、鍼灸をやっておられるんですね。どうしても(内科では)いかんやつを手術するんだということを書物の中で確か書いていたと思うんですけど。そういう発想に近いですねどっちかというと。西洋医学的には外科でやって、内科的にはむしろ東洋医学のやり方がいいんじゃないかと。それは何か根拠はありますか? 西洋医学にはもちろん内科はあるわけやし、いわゆる西洋医学の内科よりも東洋医学の方がいいんじゃないかという発想はどこから出てくるんですかね?

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 笹松 昔から自然の流れに逆らわないもの、人に優しいものが好きだったんです。自分がよく病気がちだったということもあったので…。そう考えるとですね、胃カメラや手術などを見てもらえればわかるように、西洋医学的な治療は東洋医学に比べると人に優しくない。東洋医学で治療された方が気分も気持ちもいいということもあって、できるだけ自然な治療法を選ぶということを考えたら、やっぱり東洋医学だなぁと思いました。途中までは東洋医学はどれくらい効くかっていうことが疑問だったんですが、実際に蓮風先生の治療を見ていると、西洋医学的な内科の治療にも匹敵するんじゃないかという思いもあって、これは東洋医学でいけそうだと。

 蓮風 そうですか。我々(西洋医学の)素人は消化器外科というものを分かっているようで分からないので消化器外科というものはどういうことをやるのか教えてくれますか?

 笹松 難しいですね。病院によっても変わるんですが、基本的には盲腸(虫垂炎)、腹膜炎、腸閉塞(イレウス)などの緊急疾患…あるいは消化器内科で、たとえば胃だとか肝臓だとかを見てですね、これは手術しなきゃいけないなといった患者さんが紹介されて来ます。癌の術前・術後で抗癌剤を使って治療しなきゃいけないというような方も消化器外科で対応することがあります。末期がん患者の緩和医療にたずさわることもあります。

 蓮風 それは消化器外科の領域に入るんですか?

 笹松 はい。〈続く〉