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笹松信吾さん(写真右)と藤本蓮風さん(同左)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」は、倉敷中央病院初期研修医(対談当時、現・市立堺病院外科後期研修医)の笹松信吾さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談の9回目をお届けします。対談も終わりに近づいて今回は笹松さんから蓮風さんへの質問から始まります。蓮風さんから今後の展開や方針が語られ、鍼灸界の問題点も浮き彫りになっています。(「産経関西」編集担当)

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市立堺病院で

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 笹松 今後の先生の構想について聞かせていただきたいです。10年後はどういった形で「北辰会」を展開して行かれる方針なのでしょうか。

 蓮風 ああ、「北辰会」の展開ですか。やっぱりね、さっきも話出てきたけど、まず鍼灸師、ぼくはあんまり相手にしないんです。(重視するのは)ドクター。医師のあなた方です。だからドクターコースにものすごい力を入れている。

 鍼灸師は(指導・育成を)少々やっても、いろんな意味で弱いですね。まず言えるのは、志が低いということ。一番悪辣(あくらつ)なのは商売にしてる、鍼灸をね。もうそういう連中ではどうしようもない。

 世の中に鍼灸の有効性を効果的に訴えかけるにはドクターの力を借りたほうが早いと思うんです。だからそのために、ドクターたちが鍼灸の勉強をするための教科書を書いてるんですよ。一部を見たでしょ? 『鍼灸臨床能力 北辰会方式 理論編』と『実践編』です。あれやったらドクターにも合うと思うんですよ。

 また村井和先生(医師、和歌山市「和クリニック」院長)と一緒に『ドクターのための鍼術入門』て本をね、書きつつあるんですが。結局ね、西洋医学も医学なんだけど東洋医学も素晴らしい医学で、西洋医学ができん事をやれるんだということを認識してもらうためにあらゆる努力をはらうというのが我々「北辰会」ですね。

 2014(平成26)年度からは「北辰会」の方で、志の高い鍼灸師の方やドクターの先生方への育成が本格的に強化されるようですけどね。「北辰会」は学問の内容としても技術的にもかなりレベルの高いもの持ってるんで、本当は大学になれば一番いいなと思ってるんです。キャンパスはないけども中身はかなり持ってるはずなんで。ぜひ先生にも応援していただきたいです。

 笹松 はい、協力させていただきます。

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 蓮風 他にないですか、なにか聞きたいこと。

 笹松 先生も70歳になられましたかね。

 蓮風 そうですね、古稀ですね。“こき”おろす時期だから「古稀」という(笑)。

 笹松 ご高齢ということもあるんですけど、今後どれくらい臨床を続けていかれるのかなというのを…。

 蓮風 この間もね、17、8歳の子も出場する馬術の試合に出ていって4位を取ってきました。

 笹松 あっ、そうなんですか!?

 蓮風 だから、まだまだくたばらないし、あと20年くらいは、憎まれっ子でいようかなと思ってる。ただね、やっぱり体力的に弱ってきてることも事実です。今までと同じように勉強したり、臨床やれと言われるとちょっとしんどい面もありますね。

 笹松 僕が本格的に鍼灸を勉強するまでは元気でいていただきたいです。

 蓮風 だから早く(鍼灸の本質的な有効性に)気づいて、しっかり本当の医学はこれなんだということで(本格的に鍼灸の知識や技を)求めていただかんと…。私の存命中にやっていただきたいね(笑)。〈続く〉