蓮風の玉手箱

このサイトは、2011年8月7日~2015年8月29日までの間、産経関西web上において連載された「蓮風の玉手箱」を復刻したものです。鍼灸師・藤本蓮風と、藤本漢祥院の患者さんでもある学識者や医師との対談の中で、東洋医学、健康、体や心にまつわる様々な話題や問題提起が繰り広げられています。カテゴリー欄をクリックすると1から順に読むことができます。 (※現在すべての対談を公開しておりませんが随時不定期にて更新させていただます・製作担当)

カテゴリ: 関西外国語大学名誉教授・小山揚子さんとの対話

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藤本漢祥院で対談する小山揚子さん(写真右)と藤本蓮風さん=奈良市学園北

 鍼(はり)の力を伝える「蓮風の玉手箱」をお届けします。今回は関西外国語大学名誉教授の小山揚子さんと鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の6回目。これまでより一層、医師や鍼灸界への批判が激しくなっています。批判される方々は反論や異論を抱かれると思います。そのような意見を出し合って、医療のあるべき姿を探っていく。この「玉手箱」はそんな未来を生み出す場にもなるかもしれません。(「産経関西」編集担当)

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 藤本 これまでの話で結論が出たような感じですけれども、西洋医学が発達すると、この(東洋医学や漢方などの)医学は不必要になるでしょうか?(笑)。

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 小山 私は全然そう思いませんけれど(笑)。特に個人的に、東洋医学ベッタリで今まで健康を維持してきたものですから、なくてはならないと思います。西洋医学は、お年寄りとか子供に対して色々な検査をして、かなり無理なことを強いるわけですから、弱者に優しい医学も大切です。そういえば最近、お子さんも結構多いですよね?

 藤本 そうです。今ね、西洋医学では、どうしょうもなかった子供の患者さんが来てるんです。「低酸素脳症」といいましてね。大学病院にかかっとったが、もうそれ以上治らんで…。最初2年前やったかな、3歳の女の子で、今5歳くらいになってるかな? 来た時は寝てるか起きてるか、わからない状態。今は、こっちが話しかけたら反応するようになった。ドクターたちも、この病気は治らん、脳の後ろの半分が、全部機能してないからダメだって…(言っていたそうなのに)。

 お母さんがまたね、熱心やったんです。「なんとかならんか」言うて。僕は東洋医学の考えで徹底的にやってみるいうことで、2年間ずーっとやったんです。寝てるか起きてるかわからん状態からもう名前呼んだら反応するし、特にお母さんにはものすごい反応しますね。で、そういう見放されたような患者さんって、ようけ居るわけですよ。

 小山 そうです、ホントに西洋医学は冷たいと思います(笑)。

 藤本 なんか実感がこもりますねぇ(笑)。それを諦めんと、最後までやるのは、やっぱり親ですわ。母親はものすごいもんですね。西洋医学がわかってるという振りしてるけど、実際はわからんことようけある。もう全然治らん、と言った医大の小児科の先生が「良くなってる!」ってハッキリ言うんですよ(笑)。癲癇のね、発作止めを飲んどったんやけど、「もうやめていい」って言う。で、そのお母さんは「ホントに大丈夫やろか」って言うて…。「そんなの出してる本人がそない言うてるから大丈夫やろ」って(笑)。結局ね、鍼だけにしたら、もっと冴えてきました。

 小山 はぁー。

 藤本 発作止めと言いながら眠らせてたのかもしれません。そうだとしたら、生命に対する大変、不遜なやり方。で、おまけに、「諦めろ」なんていうようなこと言う権利も何もないんですよね、ホントは…。だからいつも、この若い人達(蓮風さんのお弟子さん)に言うんだけど、「生命というのはまだまだわからん」て。西洋医学の世界では相当わかったような事を言っているけど、まだわからん。だから簡単にそう決め付けてはいけないんだと。希望を持って、医療人として、患者さんから「なんとかしてくれ」って言われ、しがみつかれたら、それを一生懸命受け止めるべきだというようなこといつも話してるんです。いま結構、後天性の低酸素脳症、多いんですわ。

 小山 あ、そうなんですか。

 藤本 以前、ブログに書きましたけども、やっぱり効果が上がってきてるんです、やれば。だから諦めちゃいかんのですな。学問でこれだけしかわからんからもうダメだというふうに…。僕は逆やと思うんですよ。分からんかったら分かるように、もっと学問展開すればいいわけであって。そういうところがなんかこう、変に、先生がおっしゃる冷たさがありますよね(笑)。そういう意味では、東洋医学も、もっともっと活躍する場もあるし、そういう医学なんだいうことで、自覚せないかんですよね。結局ね、鍼灸とは何かといった場合、一言で言えばこう、2500年前にできたバイブル『黄帝内経-素問・霊枢-』というのがある。その中に、どういうふうなものが人間であって、どういう生活するのが人間であって、その人がもし病気した場合どういう治療すればいいか、そういうことが事細かに書いてあるんですよ。そういう素晴らしいバイブルがあるにもかかわらず、目を向けない。学校行ってもそういうことを教えない。

 学校で教えるのは西洋医学がほとんどなんですね。元々、明治以前は「漢方医学」と言わなかった。「医学」と(言っていた)。ところが、蘭方が入ってきて蘭方が大きく影響し出すと、うちは「漢方」だと言い出した。面白いもんで人間というのは、「この医学が当たり前だ」いう時は、 “西洋医学”だとか“漢方医学”だとか、そういう名称を持たないみたいなんですね。それから、漢方・鍼灸ということを言い出してから、段々、西洋医学の考え方を導入せんとダメだと(いうふうになった)。これは明治政府自体がそういう方向へ持っていった。もういい加減に鍼灸師自体が、西洋医学と違う医学なんで、その違うとこに意味があるんだということを自覚すればいいのにそれをやらない。「鍼灸」と、「鍼灸師」の意識や力量の間にズレがあるんです。

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 小山 その鍼灸というのは、2千何百年前のバイブルに事細かく書いてあるのが鍼灸で、鍼灸師というのは私たちの身のまわりの治療をなさる方ということですよね。そう言われても、門外漢の私たちにとって、鍼灸師しか知らないわけで、片方しか知らなければズレはありませんよね。先生のお話の素晴らしいバイブルを教えないとおっしゃいますが、鍼灸師自体が本当に偉い先生でも、自分のノウハウはちょっと秘密にしてるようなところがある…?
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 藤本 あ、それはある程度、伝統というか、もうこれから先は門外不出と、いうのはありますね。それとやっぱり2千数百年前のバイブルは固定化されたもんじゃないんですよ。その時代と地域によって(違う)。例えば同じ漢方・鍼灸であっても中国でやるのと、それから朝鮮でやるのとは同じではない。まぁこれ日本も含めて、東アジア医学はやっぱり、個別にそれぞれ発展してますね。あの韓国ドラマの『宮廷女官チャングムの誓い』とか『ホジュン』なんかで見られるようにですね、韓国の鍼灸は、ちょっと日本とはまた違う。で、中国とも違う。それぞれ歴史的な伝統があるわけです。明治以降、政府の意向もあったけれど、歴史的な伝統を当の鍼灸・漢方やってる連中も忘れていったというか…。まだ漢方の方はね、比較的、西洋医学のドクターが中心でやってますんでね、伝統はしっかりしてますけど、鍼灸の方は医者じゃないから、そういう点でもまぁ問題あるんですがね。

 小山 鍼灸の国家試験を通って、実際に治療を始めても、経験の少ない時点でのレベルは、先生のように経験を積んだレベルとはずいぶん違いますよね。それどういう風にして、こう引き上げられるか、ということですねぇ。

 藤本 そういうことですねぇ。一番悪くて、恐ろしいのは、自分らが低レベルにおるっちゅうことを自覚しないということ(笑)。自覚する人たちが居ってもまたそういう勉強ができないとかね。

 小山 そういう自覚なさる方は、自分で数をこなしていくうちにこう色々、自分なりに、体系を整えてっていうことはあるでしょうけれど。

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 藤本 まぁ、極端に言えば、こういうことはあんまり言いたくないけれども、鍼灸をやってる人たち自体が、医療だという風に思っていないことが結構多いんですね。これは医療・医学じゃないということを割り切って、慰安的な、ちょっとやって気持ちよくなればそれでいいんだという発想の人も結構あるんですよね、これ。だからそういう人たちの存在を克服せんことには、医学者としてものを言えないんですよね。

 小山 でもまぁ、あーいい気持ちになったという、鍼灸をしていい気持ちになったというのも存在意義はありますよね?

 藤本 そうですね、ただ、医療としてはね…。確かに、良い鍼灸をやると実際は気持ちよくなるんですよね。でも、それは結果であって、その目的が最初から気持ち良ければいいというのとちょっと違いますよね。

 小山 やっぱり患者が、なんか自覚症状があった時には、行くところは西洋のお医者になってしまうのが現況ですよね。

 藤本 でもね、鍼やってもらって気持ち良いというだけなら、悪くなったら、また行かないかんということになります。だけど面白いのは、ここ(藤本漢祥院)へ来たら1回2回やったら、結局根本のところが治る。枝葉ではなく根本の問題の解決は、バイブルである『黄帝内経』の考え方に基づいてやらないといけないんです。〈続く〉

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     小山揚子さん(写真右)と藤本蓮風さん=奈良市学園北の藤本漢祥院

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。関西外大名誉教授の小山揚子さんと、鍼狂人・藤本蓮風さんの対談も終盤になってきました。長年にわたって蓮風さんの治療を受けている小山さんの体験談は実感がこもっていて、鍼の力を患者の立場から再認識させてくれます。また病院での治療に疑問を持ってもなかなか言い出せない思いも代弁してくださっています。高齢化の進行を見込んで新たな医療のかたちが模索されていますが、おふたりの対談を参考にして今後の医学の在り方を考えてみませんか。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 東洋医学には鍼灸、按摩、漢方がありますが、なぜ鍼灸を選ばれたのか。先生はたまたまご縁ですか。

 小山 そうですね。最初、私が飛びついたのはその漢方でした。

 蓮風 あ、漢方ね。
 
 小山
 こういう方法もあるんだってその時に知って、藤本先生のところへ通うようになった今でも結構、旅行の時とかちょっと体調が悪い時に利用させて貰っています。

 蓮風 はい。

 小山 ここ(藤本漢祥院)でもお灸をやってもらっていることもありますし。

 蓮風 お灸と鍼は私自身、実際使っていますけれど、中心はやっぱり鍼なんです。今後鍼灸が進んでいく場合に、鍼が中心になるべきか、それともお灸が中心となるべきか、これ患者さんの立場からどうですかね。

 小山 そうですね。なんとなくお灸っていうのは、めったにやらないから効くような気がしますね。先生はどういう風に分けているんですか。

 蓮風
 いや。お灸でないといかん場合もあります。だけどほとんどが鍼で応用ができるんですね。

 小山 うん。

 蓮風 やっぱり患者さんの立場で考えると、やっぱり、お灸っちゅうのは刺激がキツくて、もう「あぁ!」(嫌がっている表情をする)っちゅう感じなんですね。さらに灸痕がつく…。特に女性の場合は、鍼灸に行ったら急にお灸をやられて痕が残ったから医療訴訟を起こしているケースがあるんですよ。

 小山 あぁ。ありえますね。

 蓮風 うん。勝手にやられて私は傷ついたと。時代と言いますか、今後発展すべきはやっぱり鍼なんだろうなと思います。しかし、万病を治すということになると、お灸のお手伝いが要りますね。


 小山
 以前、私が本当に起き上がれないで、主人もどっか行っていない時に、どうしたらよろしいかって、電話で先生にご相談したら、お臍(へそ)の上に和紙をひいて、その上に粗塩を盛って、その上からお灸をしなさいって…。粗塩があるから最初は全然熱くない。そこで熱さを感じた時にやめたら少しは良くなると言われて…。

 蓮風 (弟子に向かって)お臍の上って言ったらな、間接的にやらないかん。一応効きましたか?

 
 小山 だいぶ良くなりました。
 
 蓮風
 で、特にね。体が冷えて、それから疲れがひどい。抵抗力が非常に落ちた場合に、温める温灸なんっちゅうのは非常にいい方法なんですね。

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 小山 うんうん。まぁそういう意味で、確かに鍼が中心になっていただいた方が患者としては楽ですね。でも「鍼に行けば」ってすすめたら「痛いでしょ?」とか(笑)。鍼という意味ではね、そういう風に反応する方は結構います。

 蓮風
 これはもう、全く技術の問題ですね。全く無痛で刺す事できますから。「痛いでしょ?」っていうのは西洋医学のね、注射針のようなものを想像する人がどうしてもいるんですね。

 小山 ええ。大学で仕事をしていた時は健康診断があったんですが、藤本先生のところへ通うようになって行ってなかったんです。顔なじみになっている保健師にも「先生、このごろ全然(健康診断に)来てないじゃない。来なくちゃいけない」と言われても「まぁまぁまぁ」ってごまかしてたんですけど、ある時とうとう捕まって、検査の血をとられたら、それまではピンピンしてたのに、もう気分が悪くなって、授業して部屋帰ってきて寝て、また授業に行ってという感じで、以来「絶対私は、あなたにどう言われようとも健康診断」をしないと言ったんです。注射の位置が悪かったと思うんですけど。

 蓮風 あのねぇ、こういう話があるんですよね。私の弟子のお父さんなんですけどね、50歳ぐらいの。胸が苦しいって。で、まだ元気やから歩いて病院行ったんですよ。注射やった途端に心臓発作で亡くなっちゃった。

 小山 はぁ。

 蓮風 これ、あんまり表に出さん方がええかもしれないけども、そういうことも実際あります。だから、先生が気分が悪くなったっていうのはね、かなりあると思うんですよ実際は。ここは(手の内側の真ん中を指す)ね、手の厥陰心包経(けついんしんぽうけい)っていってね、非常に大事な経絡が流れとって、しかもこの曲沢(きょくたく)というところ(曲沢穴、肘関節のツボ)から血取ったりするんや。あれ心気虚とか心の臓の気や血が弱ってる人には危険ですわ。

 小山 だから(大学に)20何年間いて、1、2回位しか健康診断受けてません。「私がリスクを負って行かないだけなんだから、あなた心配しなくていいのよ」って言って、いつもその保健師さんを説得してました。

 蓮風 注射針にも敏感に反応を起こしてしまうような患者さんもおって、そういうこと無視して一律にやりますからね。あれは医療として問題あるなぁって思うんですよ。

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 小山 しかしそんなに強く言えない。

 蓮風
 うん、言えない立場に置くでしょ、あれ、いけませんわ。だからそういう意味では、東洋医学の方にもっと目を向けて受けてみるというのは正解だとは思うんだけどね。

 小山 うちの母も92歳で、一人で元気に生活してますけど、やはり、医者に行っているから色々な薬を飲まされて苦しんだことがあります。大きな病院で、人工股関節の手術をしました。その時に、たぶん、血栓か何かがあったのが、ちょうど入院している間に、ちょっと悪さをして、病院の方が慌てて、その血栓を流す薬を処方したんです。大きな病院で、内部の連絡がうまくいかず整形外科がその薬をずっと処方していたらしいんですね。

 蓮風 うんうん。

 小山 で、それは発作がある時に飲めばいいよっていう薬なのにずっと飲んでいたから、まぁ体中はかゆくなるわ、まぁ大変な思いをしました。それで母は、血圧が少し高いけど、医者から処方されても「私のリスクで飲まないですから先生には関係ないです」という感じで、自分の考えを押し通してます。割と強く言える母親の娘でしたので、私の方も「私のリスクだからあなたは心配しなくていい」ということで。

 蓮風 いつも思うんですけどね。その、歳いったら血圧上がるの当たり前なんです。

 小山 え、そうなんですか。

 蓮風 なんでかというと、諸臓器が皆弱るでしょう、そしたら血液をようけ送ることによって、栄養と酸素をようけ送らないかん、そうすると心臓のこれ(鼓動)がはっきり大きく動いて、脈管を流れる、その為に血圧が上がるんですね。

 小山 うん。

 蓮風 それを、ただもうこのレベルやったら高血圧や、これがそうじゃないっていう、あの数字で決めつけるのは絶対におかしいと思うんですよ。みんな身体の出来具合いが違うからね。先生の場合かなりデリケートな身体で、それを体感しておられるから、非常に大事なことやと思うんですね。そういう意味では個人医学という、こういう東洋医学みたいなんがね、もっともっと発達するべきやと思うんです。

 小山 そうですね。〈続く〉

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藤本蓮風さんと(写真手前)と対談する小山揚子さん=藤本漢祥院

 鍼(はり)の力を伝える「蓮風の玉手箱」は今回が関西外国語大学名誉教授の小山揚子さんと鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の最終回になります。小山さんは長年、患者の立場で蓮風さんと接してこられて自身の体験で鍼に高い信頼を寄せていることが伝わってきます。背景にあるのは鍼の治療が理にかなっているという安心感かも。その気持ちは「鍼を知らないのはもったいない」と言い換えられるかもしれません。お二人の口からは現代医学への辛辣な批判も出てきましたが、今回は東洋と西洋の医学がうまく融合すれば患者さんはもっと楽な治療を受けられるはず、というお話です。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 「東洋医学と西洋医学の両者の関係は患者さんにとってどうあるべきであろうか」という、問題なんですが。

 小山 理想的に言えばこの間の、シンポのドクターのように、西洋医学を当然知っていて、東洋医学にも理解があるという先生がいて下さって、西洋医学ではこういう治療法があります、だけど、オルタナティブ(代替手段)にはこういう風なのがありますってキチンと説明をして、患者にどちらかを選ばせるというのが、理想的だと思います。しかし、それはある意味では患者に対して非常に厳しい選択を迫るのではないかと思う。だから、患者の方もどちらかを選ぶより医者にまかせてしまう、もう、手術をしちゃいました、はい、抗癌(がん)治療しました、はい、もうこれ以上期待できないから、ハイさようならというように。それで慌てて、東洋医学の方に行くと、東洋医学の先生はもうちょっと早く来てくれればと(笑)…。もうちょっとラクに手の打ちようがあったのにということになるんだろうと思うので、そういう意味で、理想的には両方の医学を知っている先生が増えればな、と思います。

 蓮風 僕は内科のドクター達とたくさん付き合って意見交換していますが、西洋医学と東洋医学は両方必要なのはわかる。だけど、ひとつの発想として、東洋医学を中心にやっておいて、何ぞの時にちょっと手伝いしてくれるのが西洋医学やったら、面白い病院ができるんじゃないかなって思っています。

 小山 発想の転換ですね。

 蓮風 「鍼灸病院」なるものを考えているんです。僕のひとつの発想としては、東洋医学を中心にやっておいて、どうしてもいかんときは西洋医学にお手伝いしていただくというシステムの病院です。

 小山 そうですね。主人(小山修三・国立民族学博物館名誉教授)が虫垂炎になったときに先生が診てすぐ手術のできる病院に送り込んでくださった、あの時の判断の適確さに感銘を受けました。先生のおっしゃる鍼灸病院ができれば理想的ですね。

 蓮風 はい。そうですね。 あんまり患者さんに苦痛じゃない診方をして、苦痛でない治療をやってもらって、それでいかん時は西洋医学に「ちょっと手伝ってよ」って、できればいいなっと思ってるんですよ。某国立大学の地震専門の学者がここへ来とるんですがね。この人は勉強よくできるから一生懸命やるんだけど、心臓が悪くなって、多分あれ狭心症か心筋梗塞まで行ってると思うけど、冠状動脈にステント入れてるんですね。それで何とかこう拡張して、心筋を助けたわけやけど、それから後でも発作がしょっちゅう起こるんです。

 小山 うん。

 蓮風 どうにもならんからって言うて、その、ご家族の方は私のところに何十年来てる方だったんで、お前あれ(鍼灸に)行ってみてってことで来院されました。

 小山 うん。

 蓮風 そして、鍼やったら難なくもう、発作起こらんようになった。

 小山 ふーん。

 蓮風 ただ最近は、無理するんで、何か貧血様の症状が起こると言うけど、もう心臓は全然何ともないですね。

 小山 うん。

 蓮風 で、こうしてみると、やっぱりこの東洋医学はもっとね、前に出て患者さん救わなあかん気がします。だから東洋医学で本当のプロの診立てのできる者と、で西洋医学の腕のある人とが組んだ時にどういうことになるんかなぁっちゅうこともひとつ考えているんです。

 小山 そうですよね。

 蓮風 手術して(体内に)水が溜まることがある。水が溜まるっていうのは、やっぱり、理由があるんだ。膝もそうなんですが、(小山)先生も膝で苦労されたんですよね。

 小山 えぇ(笑)。

 蓮風 もう僕がお手上げの時があって、先生も整形外科で手術した方がいいじゃないかって仰って、で、行ったら実際、もう、あの、骨がガサガサになってるからどうしようもないって…。で、人工関節かって話まで出ましたね。

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 小山 出ました。私はわりと活動的なのにあんまり出歩けないので、出歩かないっていうのがストレスになるんですね。3カ月くらいしたら、もうこんなストレスは嫌だから先生もう手術しますって言ったら「ちょっと待ってくれちょっと待ってくれ、もうちょっと僕に任せてくれ」って仰られて、刺絡を始めたんです。

 蓮風 そうそう。

 小山 おかげさまで、痛みが無くなった。長い間歩くとやはり、まだ途中で休みますけれど。

 蓮風 それぞれの医療の考え方についてどうですか。一方は、あの、骨がダメだから人工関節。で他方は気血の流れが悪いから、でまぁ刺絡を通じて、気血を流れるように。で、それでもまだ不便なところあるけど、まぁ、あの、そこそこ…。

 小山 私としては人間の身体っていうのは完成品だから、パーツ取り替えても、絶対そう上手くいかないんじゃないかなっていうのは、頭の片隅にありました。先生が「ちょっと待ってくれ」って仰ったので、あぁ助かったって思っていたんです。

 蓮風 医療人として、治らんものを引き止めるんも、かなり神経使うんですよ。

 

 小山 えぇえぇ。そうだと思います。

 

 蓮風 だけどね、小山先生は、西洋医学よりも東洋医学を選んでずっと鍼ばっかりやってきて、今更ね、西洋医学いうのはおかしいし、やっぱり酷だなって思ったんで、何とか工夫して。

 

 小山 歩くとかそういうことに関しては手術の方が回復したかもしれませんけど、体全体のバランスとしては、どうなのかなぁっていうのが私の、正直な疑問でした。

 

 蓮風 そうですね。まぁハッキリ言ってその、古くなれば痛みますからね。

 

 小山 そうですそうです。もう何十年も使っているから。

 

 蓮風 どの程度改善するかって問題ですよね。で、西洋医学のとにかくパーツやからということでその部分を取り替えようと人工関節にしたからって100パーセント上手くいくかっていうのは、これはまた、色々ありますしね。

 

 小山 そうですね。

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 蓮風 我々の方で治せたらそれが一番、患者さんにとってはね、良いことだなって気はするんですけども。そのほかどうですか、西洋医学と東洋医学はどういう関係にあった方が患者の立場として良いと思われますか。

 小山 どうでしょうね。

 蓮風 「この病気には、この東洋医学の方がいいですよ」とか「この病気だから西洋医学行った方がいいですよ」とアドバイスできるコンサルタントの役割ができる人がいれば、どうでしょう。

 小山 うーん。でも、万一私がそういうコンサルタントになったら、やりにくい仕事ですよね。

 蓮風 ははは(笑)。

 小山 コンサルタントの方が、ストレスで倒れてしまいそう。

 蓮風 (大笑いして)なるほどね、なかなか難しいですね。

 小山 えぇ。だからそれが、まぁ、患者がどちらか選ばなくてはいけない、患者のリスクとして選ぶというのは、それはそれで大変ですけど、一回で済みます。ところが、そのコンサルタントっていうのはそういう方を何人も相手にするわけだから、えらいことだと思います。

 蓮風 そうですね。

 小山 うーん、だから現実的にどうなんでしょうか。

 蓮風 コンサルタント自体の問題がありますよね。なるほど。

 小山 だから、私としてはやはり、もう、何十年も先生のお世話になったので、あぁ鍼灸あたりで、ちょっとそれで、手に負えないとか、こっちの方が効果的という時に、西洋の医学が、お手伝いに入ってくれるような、そういう医療施設があったらいいですね。

 蓮風 そうですね。やっぱり鍼灸病院ですね、結局。

 小山 えぇ。

 蓮風 さっきの話にちょっと戻るんですけど、水が溜まるという現象は膝でも心臓でも、それから癌でも胸とかお腹に水が溜まる。これは原理は一緒だと思うんです。水が溜まるというのはね、中に熱がこもるということなんですよ。

 小山 うんうん。

 蓮風 熱を冷やそうとして水が溜まるんです。ドクターのところ行くと、水を抜く。(膝などの場合)抜くと確かに歩くのは楽なんだ。そやけど、すぐにまた溜まるんですね。

 小山 うん。

 蓮風 何でかというと、いろんな薬液を注射したりするようですけども、その熱をとりきる治療になっていないんでしょうね。

 小山 うん。

 蓮風 そういう考え方を持つと、癌の胸腹水に対しても、この頃、それを解消する術がわかってきまして、やってるんですけども。あの、水が溜まること自体がやっぱ、身体の異変を示しているわけですね。本当に長時間ありがとうございました。

 小山 いいえ、全然たいそうな話ができませんで、申し訳ありません。

 蓮風 充分です。患者さんの立場で語って貰ったのは、蓮風の玉手箱で初めてですので、非常に参考になりました。

 小山 とにかく未病の状態を保って、どうにかその、大騒ぎにならないで済むというのも、非常に患者として助かります。<終わり>

 

 

次回は鍼灸ジャーナリストの松田博公さんとの対談をお届けします。

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