蓮風の玉手箱

このサイトは、2011年8月7日~2015年8月29日までの間、産経関西web上において連載された「蓮風の玉手箱」を復刻したものです。鍼灸師・藤本蓮風と、藤本漢祥院の患者さんでもある学識者や医師との対談の中で、東洋医学、健康、体や心にまつわる様々な話題や問題提起が繰り広げられています。カテゴリー欄をクリックすると1から順に読むことができます。 (※現在すべての対談を公開しておりませんが随時不定期にて更新させていただます・製作担当)

タグ:鍼灸


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『第11回 杏林尋宝2019』(広州中医院主催)に藤本漢祥院院長藤本蓮風が中国国内の医師の方々の推薦を受け日本人ではじめて参加しました。




▶︎中国国内記事 第十一屆杏林尋寶「洋中醫」廣州秀針灸 
  https://kknews.cc/news/v3e636q.html 

▷『弁釈鍼道秘訣集』 藤本 蓮風 (著)緑書房  


初版本(1978年発行)はこちら

  
●鍼狂人 藤本蓮風関連ホームページ

▷藤本漢祥院 (奈良・学園前にある藤本蓮風の治療院)
 
https://www.f-kansyouin.co.jp/
▶︎鍼狂人の独り言(藤本蓮風ブログ)
  
http://blog.livedoor.jp/fujimoto1005/ 

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沢田勉さん(写真右)と藤本蓮風さん(同左)=奈良市「藤本漢祥院」

 「鍼(はり)」の可能性を明らかにする「蓮風の玉手箱」は今回で、京都・吉祥院病院在宅医療部長・沢田勉さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談も最後となります。鍼灸師になってから大学で哲学を研究し、その後、医学部に入学して40歳を越えてから医師になった沢田さんの現代医療に対する見解にどのような感想をお持ちになったでしょうか?「病気が治る」ということのイメージが変わった方もいらっしゃるはずです。今回もそんなお話が出てきます。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 最近、若手の優秀なドクターがたくさん「北辰会」の研修に来るんです。やっぱり西洋医学は、それなりのすばらしいことをやってるわけやけど、ただ、その枠の中で全てを見ようとすると、やはり(向かい合う患者の)生体の現実とは違ってくるんですよね。先生が強調されたように部分が良くなっても全体が崩れている場合もあるし…。だから西洋医学の分析的な発想も大事なんやけど、もっと生命の実感みたいなものを、東洋医学をやることによって気づくということは医学者としても大事なことかなと思うんですよ。

 沢田 事実を認めるということと、自らが体験するということはすごく大事じゃないでしょうか。

 蓮風 先生は自らがずっと体験しておられるから(笑)。先生は鍼灸・東洋医学と関わって何が一番幸せだと思いますか?
    
 沢田 やっぱり素晴らしい医学があることを知ってそれを少しでも身につけるために勉強していること自身が幸せですよね。

 蓮風 なるほどね。

 沢田 僕も最初は分からなかったんですけどね。鍼灸をやるとね、ただ(患者さんの)「腰が痛い」「足が痛い」といった(身体の部分の)状態が改善するだけでなくて、患者さん自身が「元気になる」と言うんですよ。これは面白いなと思ったんですよ。で、その元気になって何が(どう変わった)というのを聞いてみたら、「先生には言わなかったけど、いつも寒冷蕁麻疹(じんましん)、に悩まされていたのがなくなった」とかね。私は全然聞いてなかったので“へぇ~”って話になってくるし。

 蓮風 そうですね。確かに、鍼灸やると、ここが苦痛やいうところも治るんだけど、知らん間にもっと悩んどったところが治ってきたりね。

 沢田 あれは面白いですよね。

 蓮風 面白いですね。

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 沢田 結局、元気になって、いろんな局所といいますか、耳なら耳、悪いところに「正気」が流れていって治っていくという理屈なんでしょうけれども、元気にするということがすごい大事です。私も鍼灸の治療院を病院の付属診療所として作って8年くらいになりました。90歳を超えたお年寄りもいるようになって「元気になっているのは鍼のお蔭です」とおっしゃる。

 蓮風 はぁ、言ってくれますか。

 沢田 はい。言うてくれて。なんかすごくね、そういう患者さんの笑顔と一緒にいると私達は嬉しい。なんかおそらく鍼灸は、西洋医学をやっている人達とちょっと違った感じがあるんですね。つまりね、患者さんが元気で喜んでくれるというのを見ると、こちらも実は元気になるんですよね。

 蓮風 そうそう。

 沢田 面白いですよね。

 蓮風 これね、「気」の世界だからだと思うんですよ。よく世間では、それだけ体の悪い人を治療していると自分の体も悪くなる、ということをおっしゃる人もいます。しかし、僕は本当の「気」というものは、そういうものではないと思う。こっちから「気」をあげるとか、もらうとか言ってるのはあれはとんでもない話なんですよ。

 私はね、鍼をもって何かやる時は“必ず大自然の大きな気が患者さんを助けてくれる”という思いでやるんですよ。だから自分のエネルギーを使うとかそういうのはない。それでやる人もおりますが、それやるとね、その人は必ず消耗していきます。大宇宙の大いなるエネルギーを使うとかね、一切そんなのないですからね。(本当の「気」の世界では)むしろ今、先生もおっしゃったように患者が良くなって自分も元気になる。

 沢田 そうですよね、これは面白い仕事だと思うんですよ。

 蓮風 これは大変な世界なんで。そういう話が出たというのは非常に嬉しいですね。

 沢田 とっても幸せな仕事させてもらってるなと思います。

 蓮風 確かに沢田先生は一時、耳がほとんど聴こえない状態でここへ来られて、もう何か言うても「はぁー?」て言うてはった。今、びっくりするほど聴こえてますね。僕以上に聴こえてますね(笑)。これはやっぱり先生が私の鍼を信じて頑張って来られた成果だろうと思いますわ。

 沢田 何事もまずは実践。なんでも自分で体験してみることが大事ではないでしょうかね。そして事実は事実として受け止めるということが大事なことだと思いますね。

 蓮風 同感です。今日は長い時間ありがとうございました。<完>

※沢田勉先生は2017年7月に御逝去されました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。


次回からは医師で藤原クリニック院長の藤原昭宏さんと蓮風さんの対談をお届けします。

 

 


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藤本蓮風さん(写真左)と沢田勉さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 あけましておめでとうございます。今年初めての「蓮風の玉手箱」をお届けします。京都・吉祥院病院在宅医療部長・沢田勉さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談の第8回目です。鍼灸師を経て医師になった沢田さんが自身の経験や今後の日本の社会の情況も踏まえて、今後の方向性についての提案をしています。「医療」は誰のために存在し、どのようにあるべきなのか…を考えるきっかけになるのではないでしょうか。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 先生は鍼灸師から医者になられたことを紹介致しました。その経歴や医師としての経験も踏まえて今の鍼灸師、またこれから鍼灸師になる人に何か言いたいことはありますか? せっかく鍼灸やるんやったらここだけ押さえてやらないかんよということをおっしゃってください。

 沢田 そうですね。やっぱり鍼灸師の先生方は実はすごい医学を使ってらっしゃるんだということを理解してほしいというのがありますよね。特に「臓腑経絡学」とかそういうものが土台にあって人間の体を丸ごと、それを大事にして治していく医学がここにある訳ですよね。そうしますと整形外科の“下請け”をやっているのではもったいないですよね。

 蓮風 そうですね。悪いことではないけどね。

 沢田 悪いことではないんです。

 蓮風 鍼・灸には内科的にすごく難しい症状を治せる力がある。その背景には、ちゃんとした学問があるんだということですよね。

 沢田 たとえばね、実はこれからずっと日本は医者不足なんですよ。先進国のなかでは日本は医者が少ない。これからどんどん増えそうもない。そうしますと、一般の風邪ひきなんかをどこで治すか…。鍼灸で自分の家族も含めて治せるようにした方がはるかに国民のためになるし当然、医療費の削減にもなりますよね。(医者不足の状態になると)鍼灸って自らの病気の治療に役立って感染症にも効くんですよということを国民にアピールすることができるようになると思います。

 蓮風 そのためには鍼灸師がしっかり勉強して、西洋医学と違うということや素晴らしさを自らが実感してそれを家族にまで施せるとこまでやっていただきたい。そのことが、実は国民を救うことにもなるのだというお話ですね。

 沢田 そう思います。

 蓮風 で、同時に今のドクター、これからドクターになられる方に、何かアドバイスがありましたら。

 沢田 そうですね。東洋医学というとドクターにとっては、漢方が中心でしたよね、今までね。漢方が中心だった。でも、考えてみると『黄帝内経』の中には実は鍼灸についていっぱい出てきますよね。
    
 蓮風 そうそう、そこら辺が間違われておるんですわ。どっちかいうと漢方は鍼灸の仲間やけど、漢方のほうが上だというような印象を抱かれがちですが、これとんでもない間違いでね。

 沢田 反対だと思うんですね。
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 蓮風 はい。漢方医学の原典は『黄帝内経』。『黄帝内経』が使っている医療はほとんどが鍼灸なんですね。先生のおっしゃる通りなんですよ。それ知らない人が沢山おりますね。

 沢田 はい。知らないで東洋医学を勉強してると思ってらっしゃる医者が多いと思うので、「ぜひ、鍼灸も含めて勉強していきましょう」と言っていきたい。それはものすごく大事なことです。一番いいのはね、ドクターの先生ご自身が病気になって患者さんになったら「藤本漢祥院」に来て蓮風先生の治療受けるのが一番いいだろうなと私は本当に思います。

 蓮風 実際に今日も「北辰会」に関係ないドクターが(治療を受けに)何人か来てるんですよ。何だかんだ最初言うんだけど、鍼が効きだすと黙って喜んで「ありがとうございます」と言って帰りますね。そういうことがもっともっとね宣伝されないかんですね。この業界は宣伝が下手というか。この『蓮風の玉手箱』もそういう働きの一つをしておると思うんです。

 もうひとつ何か言いたいことありませんか。ドクターやこれからドクターになられる先生方に、ここだけは押さえといて欲しいということ。

 沢田 ドクターは、病院の中で仕事するので(法律や制度の問題もあって)鍼灸をする機会をつくるのが中々難しいんですよね。忙しいので勉強するのも難しいとか、色々な問題がありますよね。そういうところは、むしろ「北辰会」は一生懸命フォローして下さったり、蓮風先生もお力入れてくださったりしているので素晴らしいと思うので、是非ご一緒に勉強して頂きたいという気持ちでいっぱいです。孤立すると中々難しいんですね。それから変わったことをやっているということでただ周りから冷たい目で見られたりとか。
   
 蓮風 そうそう。オカルト集団ね(笑)。

 沢田 そういう風に思われがちです(笑)。それと、患者さんの支えもあってやれることですけど、やっぱり一人でやってるのは辛いですよね。ですから仲間を作って勉強を一緒にしてということであれば、鍼灸も有力な選択肢のひとつになってくるはずです。「北辰会」はドクターを一生懸命援助しているので、入って一緒に勉強して頂ければと思います。<続く>


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沢田勉さん(写真右)と藤本蓮風さん(同左)=奈良市「藤本漢祥院」

 今年最後の「蓮風の玉手箱」をお届けします。吉祥院病院在宅医療部長・沢田勉さんと、北辰会代表の鍼灸師、藤本蓮風さんの対談も7回目となり終盤に近づいてきました。沢田さんの実際の体験を通じても現代の医療現場で、鍼灸が有効なことが示されてきましたが、今回もそんなケースが紹介されています。西洋医学と東洋医学をもっとうまく使い分けることができれば、患者に負担の少ない効果的な治療の可能性が広がってくるように感じるのですが…。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 かつて「急性虫垂炎」の治療について、お教えしたことがありました。それが当直のとき、役に立ったと言っておられましたが、どんな様子ですか? 宿直医になると、ある意味、全科にわたってやらないかんですね?

 沢田 病気って、夜中に重症になることが多いんです。面白いなと思うんですけどね。で、重症の患者さんが突然やって来る事があって、「急性腹症」…お腹が張ってくるというような症状と痛みを訴える。どうも(レントゲン)写真によると(腸閉塞などの)イレウスだということがありますよね。そんな場合は、「上廉(じょうれん)」1に鍼を刺してみたらいい、という話をうかがってました。特に6月とか7月とかね「湿熱」2の強い時期は、「湿熱」を助長するものをたくさん食べたり飲んだりして発症した場合には効くというわけですね。けっこう回復させました。あの鍼を入れるとね、何分後かに便が出て来るんですね。下痢便がドッと出たりするんですよ。ところが、ある時、凄いお腹で、やっぱりイレウスだったんですけどね。

 1:ツボの名称。正式には「巨虚上廉(こきょじょうれん)」といい、通称「上巨虚(じょうこきょ)」という。藤本蓮風著『経穴解説 改訂増補新装版』(メディカルユーコン刊)のp.88~93に詳しく解説されていますので、専門的な内容に興味のある方はそちらも参照してください。(北辰会)

 2:コッテリとした高カロリーな消化に時間がかかる食品。陰陽論でいう熱性の強い食材を多く用いた料理や揚げ物など。(北辰会)

 蓮風 イレウス?

 沢田 イレウスだったんですが、「上廉」で治らなかったんです。そんな場合、現代医学の治療はね、上から、腸に溜まった排泄液を吸うしかないので「イレウス管」という管を入れるんですよ。鼻から入れて、こうず~っと食道を通して、十二指腸まで通して…。エックス線の透視画像を見ながら入れるという、けっこう技術的に難しいことをやるんです。「イレウス管」をズッと小腸まで入れて、そこから排液して。排泄液がドンドン溜まればいつか破裂しますので、緊急性がある場合にするんですよね。まぁそういうことをしないといけないかという様な所までいってですね、で、その時、仕方がないから「胃兪」3とか「脾兪」3とかね、鍼をしてみたんですよ。すると、20~30分経ったころから、水みたいな便が(下から)ジャーと出るんですね。こんななってる〈大きなお腹の様子を示すジェスチャーをして〉ところからドンドンドンドン出てるんですよ。これはちょっとビックリしましたし…。

 註3:胃兪、脾兪というのもツボの名称。背部にあって、東洋医学でいう脾の臓や胃の腑の反応を示すツボで、そういう臓腑を調整することのできるツボ。専門的解説は『経穴解説』を参照ください。(北辰会)

 蓮風 「腸癰」(ちょうよう)っていうんですよね、東洋医学用語では。

 沢田 はい、はい。だから虫垂炎だけじゃなくて、そういうケースでも使えるんだなってことは確かに分りました。お陰さまでありがとうございました。

 蓮風 いやいや。

 沢田 まぁ一つ覚えでやってるんで、困ったもんですけど…。

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 蓮風 私の内弟子のひとりが内科でも色々あるのに、沢田先生が、なぜ呼吸器内科を選ばれたのか、ということに興味を持っています。それについてお聞かせください。

 沢田 胸部写真の読影が結構面白いんだなと思ったことがひとつのきっかけでしたね。

 蓮風 それがきっかけですか?

 沢田 はい。それから、わりと有名な先生がよく指導してくださってて、1枚の写真がどんな風に読めるかというようなこと、そういうことからでしょうね。それから病院からも呼吸器の医者がいないので、「お前、呼吸器やらんか?」というような要請がありましたので。面白そうだなというところもあって、そんなことです。

 蓮風 でまぁ、ついでにそこまで話が出たからちょっと先生にまた慢性の呼吸器不全の、慢性気管支炎ですかね。呼吸困難がおこる、その症例について、お話ししていただきたい。
    
 沢田 はいはい。ああ、ここ(藤本漢祥院)で、そういう症例がありましたよね。

 蓮風 あれ、治しましたね。あれはどうですか。西洋医学的にみたらどういうように評価できますか。
    
 沢田 それはすごいことですよね。気管支拡張症が治るってことは…。その方は写真の上での重症度はひどくはなかったですが、症状が非常に強かったですよね。それを見事に、症状はほとんどない様ですよね。

 蓮風 つい最近では山道を1万歩、歩けたというんですよ。

 沢田 西洋医学ではね、そういうことは聞いたことはございません(笑)。

 蓮風 先生にお診せしたころでしたか。最初来たころは冬場は沖縄にいかないと呼吸が苦しくてしんどい。沖縄の暖かい所だったら大丈夫。毎年行っとったんですよ。で、沖縄の鍼灸院で漢祥院のことを聞いて、“あんたの側にいい先生おるやないかい”ということで来たのがきっかけなんですよね。でまぁ、今では冬になっても(呼吸が苦しいのは)全然ないんですよね。

 沢田 現代医学の病気の評価というのが例えば“形”…。写真撮ってCT撮って、こんなに傷んでるんだから仕方がないというようなことになってしまうんです。でも、実は治す方法がいっぱいあるんですね。まぁ、先生はそれ(=治す方法)を使っておられると思います。やっぱり、そこのところ東洋医学の方が深いし非常に役に立つという理解ですよね。まぁ、上ですよね。実際、治してる訳ですから。どう考えても東洋医学の方がレベルが上ですよ。〈続く〉


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沢田勉さん=京都市南区「吉祥院病院」

 鍼灸師で北辰会代表の藤本蓮風さんがゲストを招いて鍼(はり)の可能性を探る「蓮風の玉手箱」をお届けします。今回は吉祥院病院在宅医療部長・沢田勉さんとの対談の6回目。「木を見て森を見ず」という諺(ことわざ)があります。人間の身体も一部分だけに注目して全体を見ないと、具合が悪い、という考えの方が素人にも理にかなっている気がするのですが、実際の医療現場ではそうでもないようです。沢田さんが時計職人だったお父さんの言葉を交えて、ちょっと怖い実情も話してくれています。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 伝染病は鍼灸漢方で治らんということじゃないけども、西洋医学のほうが便利はいい。利便性ちゅうのはありますよね。

 沢田 ありますね。

 蓮風 それが、明治政府が漢方鍼灸を否定して、西洋医学でないと医学でないという風にもっていった理由の大きな柱だと思いますね。

 沢田 そうですね。特にドイツ医学ですよね。あの森鴎外は、森林太郎といいまして、あの陸軍、陸軍軍医、なんだっけ? 中将とか?

 蓮風 軍医総監。

 沢田 軍医総監ですか。トップの地位だったんですね。彼はドイツに留学してるじゃないですか。彼らが選択したのは、結局ドイツ医学だった。軍隊が強くなって、その軍隊のために必要なもの。で、それを支える様な医学が絶対必要だということでそちらに行ってしまった。

 蓮風 まぁあの連中が、そういうことを叫んだんでしょうね。結局ね。実は、あの森林太郎、森鴎外こそは、実は漢方医と深い関わりがあるんですね、実際は。だけども、日本の当時の国状からいって、どっちかいうと西洋医学に傾いた方が得だということをどうも考えとったみたいで。その点については、大分前ですけど、大阪大学の衛生学の丸山博先生がよく研究して発表しておられまして、私はその話をよく聞いたんですわ。実は僕、丸山先生の腰痛を治していたときに、その話をうかがったんです。

 で、次に行きたいんですけど、先生は時々「時計を時計屋さんが壊す」と言うお話をなさいますが、これについての“謂われ”とその意味をちょっと教えて頂けますか?

 沢田 はい。私の父親は時計職人でした。割と上手だったらしくて、まぁ子供の記憶ですけどもね。時計って昔はね、ゼンマイ時計って知ってます? 今は骨董品の様になってるでしょう? ゼンマイを全部こうギューッと凝縮させて、その力で、エネルギーでね、歯車動かしたり。それから解かれる時の周期性あるじゃないですか。それを時間としてね、刻むようにして。まぁそんな様なものだったんですよ。

 どうも父親は製造もしたことがあり、そういう工程を知っていたらしくて。(人間でいうところの)病気、壊れるポイントが有るっていうのを知ってたんですよ。で、他の時計屋さんはそれを知らないために、結局、私の父親の言い方によるとね、「いじり回して壊してる、悪くしている」と、そういう言い方をしていました。だからまぁ7割は時計屋が壊すと言うんですよ、時計を(笑)。

 蓮風 これはやっぱり何か暗示してますか? 医療に於いても。

 沢田 私は、医者が7割壊すという様なことはよう言いませんけども。ただ似た例はいっぱいありますよね。

 蓮風 ありますね。

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 沢田 いじり回して、結局全体が大事なのに壊してしまう。医者が一番否定するけどね。「医原病」って実はあるそうです。

 蓮風 そうそう(笑)。こういう字でしたかな、「医原病」。医者が基で起こる。これ、最近は言わなくなったけど昔はよく言いましたね。今から2、30年前は。

 沢田 そうそう。医者の治療が、或いは薬の治療が、良かれと思ってやった薬の治療がね、別の病気を引き起こして、そういうことが…。まぁ実際あるんですね。

 蓮風 僕の場合は『鍼灸ジャーナル』(休刊中)の「難病シリーズ」でおわかりのように癌(がん)の治療をよくやってるし、今もやってるんですけども、どうもね、西洋医学が上手く行かないのはね、癌をいじくり回すからじゃないかな。すると、癌も反発してね。「そんな、いらんことするな」っていう…(笑)。何かそういうとこも実際あるんじゃないですかね。だから時計の話と似とるけど、いじらんかったらそれなりにうまくいってるのにいじるために潰れるという(笑)。こういう部分、ないとは言えませんね。

 沢田 ありますよね。或いはね、僕らが一番悩まされたのは、手術でお腹を開けた時です。腸ってね、空気に触れるとベタッとくっつき易いんですね。そういう習性っていうか、そういう風になるらしい。

 蓮風 癒着ですね?

 沢田 癒着をするんです。だから切った処に癒着するだけじゃなくて、色んな処にこう癒着するらしくて。そうするとね、(腸閉塞などの)イレウスを起こすんですね。で、本人さんは苦しいから「何とかしてくれ」って言うでしょう。そうすると医者はね、その願いに応えてね、もう一回また開け直す。

 蓮風 応えて…。

 沢田 他に方法がもしなければ、そうならざるを得ないじゃないですか。で、患者はドンドンそれを要求してくると、もうドクターの方も、まぁ外科医の方もね、もう断り切れずにやってしまうってことで「ポリサージェリー」っていう名前がついてますけどね。ポリは沢山って、サージェリーは外科手術って意味ですけどね。そういうことも有り得るんですよね。まぁそういう意味では、やっぱり、いかに生体を傷つけない様にして元気にっていうか、治していくか、みたいなものが中心に成らざるを得ないだろうなという風に…。

 蓮風 この「玉手箱」では村井和先生とも対談をやったんですけども=「和クリニック院長の村井和さんとの対話」(1)~(10)参照=、彼女がしきりに言うのは、やっぱり西洋医学は非常に侵襲性が強い(=身体への影響が大きい)部分があるということ。それに対して東洋医学は侵襲性が非常に少ないんだと…。それがやっぱり東洋医学の魅力のひとつなんだということおっしゃったことありますが、そういうことでしょうね。

 沢田 全くその通りですね、はい。〈続く〉

 

 

 

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