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談笑する藤本蓮風さん(写真左)と川口洋さん=奈良市、藤本漢祥院
3月に入り、もうひと月もすれば例年のように各地でサクラも見頃です。今シーズンは厳しい寒さが続きましたし、まだまだ冷え込む日は少なくなさそうです。お身体の調子はいかがでしょうか。気候が日々違い季節が移り変わるように私たちの身心も変化しています。そんなことも、この「蓮風の玉手箱」ではよく話題になりますが、今回は“普段の状態”も、ひと様々という、お話。帝塚山大学の川口洋さんと、鍼灸師の藤本蓮風さんの対談を読んで身体のこと、医療のことを考えてみてくださいね(「産経関西」編集担当)
蓮風 西洋医学の先生とのつきあいが多いんですが、「いったい何がご専門ですか?」って聞かれます。そうしたら「私はゼンカ(全科)モノです」と答えます(笑)。
川口 はい、はい(笑)。
蓮風 目だろうが鼻だろうが、足だろうがお尻だろうがね。みんなやっちゃうんですよと…。昔の漢方医というのはほとんどもう全科にわたってやった。場合によっては出産の時も付き合ってみたり、そういうことも全部やってる訳ですねぇ。
確かに専門というのは非常に立派な考えで、これはこれで必要だと思うけど、人間はバラバラにあるわけじゃない。全部繋がってるから、全体への視点が必要で、全科にわたって包むような思想がやっぱあるんじゃないかというのが、僕の考え方なんです。川口先生が、ぎっくり腰で、痛み止めの注射を打たれたという話が出てきたんですけど、(病院では)検査漬けといわれるくらいに検査をされますね。東洋医学はたいして…たいしてというか全くそういう検査やらない。その代わり脈を診たり舌を診たり、手足や背中やおなかなどのツボや経絡上の反応を診るために身体中を触りまくりますねぇ。これについてどうですか?手当てという医学について。
川口 そうですね。治療を始める前に長い時間をかけて問診で、今までどういうスタイルで生活してきたか聞いてくださる。慢性病だと、自分が気づかないうちに何か、おかしな習慣が身についている可能性があると思うんです。丁寧に問診していただいて、こういう風に聴き取り調査をするのかとびっくりしました。毎回、脈を診ていただいたり、症状によっては舌の裏を診ていただいたりして、また、びっくりしました。丁寧に観察して、普段と違うところを見つけてくださるのに驚いています。
蓮風 ああ、そうですか。
川口 私は、1週間に1回ずつくらい診ていただいています。元気な時と、元気でない時の違いを観察してくださっていると思うと安心できます。
蓮風 ああ、そうですか。
川口 お医者さんに普段の状態を知っていただいている方が、安心です。
蓮風 そうなんですね、そこが非常に大事なんです。普段、どういう生活をなさって、最近は身体とか、心にどういう負担をかけていらっしゃるかと、いうようなことに常に興味を持ってます。やっぱり安心ですよね。それ非常に大事なことやと思うんです。それで、人によってはもう、うち(藤本漢祥院)の玄関入っただけでなんか楽になるとかね、ここもう、これなんかある種の信仰みたいになってくるかも知らんが、最初はそうじゃないんですよね。段々段々、助けてもらったという意識みたいなもんがあって、で、そういう人間の、この交流こそが医療の土台やっていうのが私の考えなんですけども、それがやっぱりこう、うまく行くと本当にこう、治療家とその患者との関係を超えてですね、非常に信頼関係を持っていただくっちゅうのねぇ、ありがたいなって思っとるんですけれども。
川口 病院へ行くのは、どこか故障がある時です。我々患者が、普段とどのくらい違うか、病院の先生方は、わかってくださるのかなと心配になる時があります。
蓮風 そうですね、我々の方では「未だ病にならざる=未病」と言うんですがね、病気かいうと病気じゃないんだけど、かと言ってほな健康か?いうたら健康じゃないという。その段階で、まぁ西洋医学的に言うと予防医学というか、そういうこの未病の段階でこう診たてて、そして病気にならんようにしていくという考え方が基本なんですわ。ですから、先生がおっしゃるように、その平生のものと病気になってからとの違いをどう見てるんか言うと、おそらく西洋医学はそういうことをわかってないと思うんですよねぇ。で、これ非常に重要なことですよね?
川口 はい。患者の立場では、体調が悪くなるのを予防することができれば、ありがたいです。
蓮風 はい。まず健康があって、未病という段階を経て本当の病になる。だからその流れを知ってるのと知らないのとでは、えらい違いですけども、西洋医学は検査による結果が中心なんですよね。この間もネフローゼの子供の患者さんを診て、かなりびっくりするような効果をあげました。この患者さんは、西洋医学で色々やって治らんで、ステロイドもどんどん多量に…ムーンフェイスになってね。私はこういう(治療に使う打鍼を取り出して)金とか銀で作ったこういう太い鍼=写真(1)=を、お尻のあたりにあてるだけでね、数回で良くなってきたんですよ。それが西洋医学の検査でも変化が出る程度にまで効果が出ました。
註:太い鍼をツボにあてるのみで治療するという専門的な内容は、緑書房の『鍼灸ジャーナル』Vol.26、27、30に、「蓮風打鍼術の応用」として3回にわたり連載している。写真(1)(2)は同誌より。
川口 それは素晴らしいですね!
蓮風 はい。ほいで子供やからねぇ、まぁ、こども病院とかいろんな小児科行って、まぁ言ったら、注射などで痛い目あわされとる訳ですよ。だから最初は鍼を怖がったけど、「怖くないよー」と言って、先の丸い太い鍼をツボにあててやった=写真(2)。それからもう全然、怖がらんと鍼を受けるようになって、どんどん良くなった。
川口 まず、信頼が重要だと思います。
蓮風 そうなんですよね、はい。子供自体が安心して、もうこの頃は玄関入ったら飛びついてきます。で、先生がおっしゃるように、まぁ、どっちかいうと優しい医学だと私は思うんですけどね。この優しい医学を知ってる人はいいけども、知らんとね、鍼を受ける機会もないというのはもったいない。早い段階で鍼を受けていたら、もっと簡単に楽に治るだろうし、それから、亡くならなくても助かったのに、知らんために亡くなっちゃったいうのは、僕ものすごく悔しいんですね。で、そういう事がないようにと思って、まぁひとつの啓蒙ですね。それをやってるのが、この「蓮風の玉手箱」なんです。そういう点でまぁ、先生が実際に患者として来られてどういう感想を持たれたかいうような事をお聞きしてるわけなんです。<続く>
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