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藤本蓮風さん(写真左)と関隆志さん=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東北大サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)高齢者高次脳医学研究部門講師の関隆志さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の2回目です。前回は、大学で鍼灸治療に取り組んだ関さんが周囲の医師から「あいつ変なことやっている」という視線を感じながら、口で「鍼治療がいい」「漢方が素晴らしい」といくら言っても信用してもらえないので、実績で示そうとした、というお話でした。今回はその続きとなります。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風
 口で言ったり本に書いたりする人が多いけども、実際治してみせるということがね、なかなかない。我々は実際に治すという方向でいろいろ解決してきた訳です。昨日今日と続いて(藤本漢祥院で蓮風さんの)診療をみていただいた訳ですけれども、どうですか。

 関 当たり前ですけど、足元にも及ばない。いつも大変しょげて帰っていきます。

 蓮風 いやいや…(笑)。できるだけ交流を持ってお互いの知識を学びあうということが大事だなと思っております。こういう鍼灸漢方通じて、何を求めておられますか。新しい医学を求めておられますか。

 関 伝統医学というのは世界に3つあります。ひとつはユナニ医学といいまして、中東・アラビアの医学ですね。それで今はインドとかパキスタンで行われていますよね。それからもう一つはインドのアーユルヴェーダ。それであとは東アジアのこの中国に起源を持つ医学ですね。この世界の伝統医学の中でも、特にこの鍼灸、あるいは漢方というものが非常に優れたもののひとつで結局、人類の財産だと思うのですね。

 ですから、その財産をただ守るのではなくて、そこから医学を進歩させるヒントを得られるだろうと思うんです。ですからそういうヒントを活かすというのが、最終的な目的です。そのためにはやはり伝統医学を自分で学ぶ必要がありますし、そして今度は科学的に定量的に何がどのくらいどう違うのか…。たとえばツボの働きひとつとってもそうですし、それを誰にでも分かる形で数字にするといいますか。そういう作業も同時にやりながら、伝統医学をこれからの将来に、人類のために活かしていくというのが、それが目的です。

 蓮風 なるほどね。

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 関 最終的には、今の医学を進歩させて、今の医学と…まあ西洋医学ですね、それと伝統医学を融合させるような。本当の意味でその目の前の患者さんにとって一番いい治療法を選べるようなものが将来できる、そのための準備をしなければいけないと思います。

 蓮風 融合させる場合に、伝統医学は非常にまた個性的な考え方を持っているし、西洋医学は西洋医学で、まあ一応科学という名前を称して実証的にやっているわけなんですけども。私に言わせると、伝統医学も、これはこれも実証やと思うんですよ。その場合に“融合”ということが果たして起こるかどうか。これは中国の鄧鉄涛先生(=広州中医薬大学終身教授で、中国政府から「国医大師」の称号を授与されている)もおっしゃっていますけども、「将来はひとつになるだろうけども、今のところなっちゃいかん。なるべきではない。」ということをおっしゃっているのです。先生はこういう考え方に対してどう思います?

 関 ひとつの病気とか、あるいはひとりの人に対して見方が違うのですね。

 蓮風 そうですね。

 関 ですから私のいう融合というのは、それを同じにするのではなくて、違う見方で、色んな違う見方で一人の人とか人の病気を診る、それが大事だということなんです。ですから、融合というとちょっと語弊があるかもしれないですが、違った見方で一人の人の病気を診る。

 蓮風 …ということは、(西洋医学と東洋医学の)それぞれの個性を持ちながら話し合いをすると。患者さんのために協力するんだと。

 関 もちろん、そうなんですね。話し合いというかその辺をですね…。どうしても手術が必要な場合とか、どうしても薬が必要な場合とかあると思いますし…。

 蓮風 あります。

 関 ですからそれを、何というのでしょうか…。誰にでも使い分けですよ。要するに、この人は鍼灸がいいとか、この人は漢方がいいとか、この人は西洋医学の薬がいいとか、手術がいいとか。その一番適切な使い分けを誰でもできるようになる、それが私の考える融合という意味です。

 蓮風 それが融合という概念なんですね、先生の言う。

 関 ええ。〈続く〉