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藤本蓮風さん(写真左)と関隆志さん=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東北大サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)高齢者高次脳医学研究部門講師の関隆志さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんの対談も中盤となり今回で6回目です。前回は日本の医学教育などの改革の必要性が強調されました。今回は鍼灸界側の問題点が主なテーマです。国際舞台ではさまざまな改善の試みも進められているようです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 素晴らしいお話をしていただいていますけれど、先生のお立場から鍼灸師に望まれることを聞かせてください。

 関 望むっていうよりは、素晴らしい能力をお持ちの方がたくさんいらっしゃるので、仲の良い医者の知り合いをたくさん作ったらいいんじゃないかと思います。

 蓮風 いやぁ「北辰会」は、それを先駆的にやってるんですけどね(笑)。そうですね、同じ医療者としてね、そういう話し合える場が普通にはないですね。私が開業した50年前は医者と同席しとったらもう、上下関係。お前たちはなんだっちゅう感じで、こちらを見下すような、そういう時代でした。しかし同じように病気を治しているのにおかしいなぁ、なんとかこう話し合いができんもんかと考えました。結局、自分らの質を上げるしかないなというふうに思い立ったわけです。今やっと北辰会は総勢300人くらいおるんです。その中で医師が参加するドクターコースを作って今、十数人が在籍しています。まぁぼつぼつそういうことを手掛けているわけですけども、これは「北辰会」だけやなしに、もっともっと広めないかんですね。

 関 そうですね。

 蓮風 東北大学ではそういう場は設けておられるんですか。

 関 ここ10年くらいですかね、月1回だけですけども…。10年以上講習はしてます。あとは自分で3年間のカリキュラムを作って、週末に本当にプロとして漢方とか鍼灸をやりたい人と一緒に学ぶ場を作ってはいます。

 蓮風 そういう場がどんどん広がらないかんですね。それとやっぱり対談の最初のほうに出てきたように、西洋医学で治らんやつをどんどん治すことですね。

 関 そうですね。
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 蓮風 結局はね。先生の回答の一つに鍼灸師に望まれることは、中医学に基礎を置いた上で多くの流派を学ぶこと、医師の仲間をつくることですと、おっしゃっているわけで、誠にその通りだと思うんです。でも、この流派同士の話し合いがなかなかできないですね。

 関 ええ、ですから最初にお話ししたように(流派間で)言葉が違うんですよね。

 蓮風 うーん、そうですね。

 関 今、日中韓がWHOの「国際疾病分類」の改訂やってますし、それから「ISO国際標準化機構」ですね、ここでやはり国際標準作りを鍼灸と漢方やってます。

 蓮風 まず概念の統一からですか。

 関 そうですね。それもまぁ統一というか、同じ言葉を違う意味合いで使ってますからね。たとえば同じ漢方薬でも実際に長い歴史の中で構成生薬が違ったり、あるいは分量が違ったりしてますし…。ですから、同じ言葉を違う意味合いで使う時に、ちゃんと使い分けをするようなことが必要なんですよね。そういったことをやって、それで、違う流派の人達がお互いに学び合うということが大事だと思いますね。

 蓮風 そうですね。そういうことができたのは、さまざまな言葉を英語に直すという仕事があるからですね。

 関 ええ、あれはフィリピンのマニラにですね、WHOのオフィスの一つがありまして、韓国で現在、韓医学研究所の所長をされているチョイさんという韓国の方が先駆的に日中韓の言葉を集めて、WHOの『東洋医学標準用語集』(『WHO International Standard terminologies on traditional medicine in the Western Pacific region』)というのを作ったんですね。

 蓮風 そしたらまだまだ叩き台ですね。

 関 叩き台ですね。

 蓮風 そういうことですね。

 関 はい。〈続く〉