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藤本蓮風さん(写真左)と関隆志さん=奈良市「藤本漢祥院」
鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東北大サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)高齢者高次脳医学研究部門講師の関隆志さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談も第8回目、終盤に入ってきました。今回は東洋医学の存在意義や、韓国での医学界での新しい試みなどについて語られています。(「産経関西」編集担当)
蓮風 私は勇猛心を奮い立てて14、5年前から癌(がん)治療をかなり心掛けています。やっと今、西洋医学で改善しないケースでも、治る可能性は十分あるという段階にまできたんです。だから、この医学が存在する意義というのはやっぱり西洋医学ができないことをやってみせることだと実感しています。これもたぶん先生のご意見と一致してると思うんだけれども、そのあたりはいかがですか。
関 (この対談の)初めのほうで、大学病院での鍼灸はどのような存在かといった、ご質問をいただきましたけれど、やはり他の先生方が一生懸命やって治らない患者さんが紹介されてきますから、そういうことで西洋医学では治らなかった患者さんを診る機会をいただいたっていうのはあります。
蓮風 はい、そうですね。
関 まず最初はですね、西洋医学で治せないものを治していく、これが良い方法だと思うんですが、さらにその次はですね、今度は西洋医学で治せるものをさらにより良く治す、と。
蓮風 ベターに治す、と。
関 ええ。これがその次の段階…というか本当は両方一緒なんですけども、あまりにも知られてないですから、鍼灸が。
蓮風 そうそう。そこなんですよ。
関 そのためにはやはり西洋医学で治せるものを治してもあんまり評価されないんで、治せないところを治す、というのが入り口としてはあると思います。
蓮風 だから結局よく知られるため、私は鍼灸師を中心にした「北辰会」という勉強会を持っとるわけですけども、同時にブログを書いたり、それから今やってるこの「玉手箱」、これは結構素人さんもよく読んでくれていますし、いわゆる西洋医学のドクターたちも読んでおられます。こういうことを積極的にもっともっとやらないかんなぁと思っとるんです。先生はネットで何か発信されているんですか?
関 あのぉ、労力がかかることはやらないです(笑)。今、自分の研究中心にやってまして、本当はおっしゃる通りだと思うんですけども、なかなかブログなどを作る余力がないので。
蓮風 あぁ、わかります。
関 残念ながら、やっていません。
蓮風 元気になられたらね、やられるかもしれませんね。先生くらいの方が世間に叫ぶとまた違いますんでね、影響力が。
関 そんなことないです(笑)。
蓮風 いやいや(笑)。大いにやっていただかないかんなと思っております。それからすでに出た話と重複する部分があるかもしれませんが、今後両医学がどのような関わりを持っていくべきだとお考えですか。結局、先生のお立場では、さまざまに病気、人間をとらまえる立場があるんだと…。それはそれで存在して、そしてお互いに患者さんのために何を成すべきか、というようなことを考えることが大切だというように理解しましたが…。
関 言うのは簡単ですけども、じゃあ実際どうするのかと。韓国はですね、医者の資格が2つに分かれてまして、いわゆる西洋医学の医者とそれから韓医学っていうんですが、これもう全然別の教育システム、別の教育を受けてやるんですね。それで非常に仲が悪い…。
蓮風 ほー。
関 犬猿の仲だと言われています。鍼治療が健康保険がきくもんですから、韓国では。それで韓医学のお医者さんの方が羽振りが良かったりするんですね。今、韓国が取り組んでるのは、たとえば癌とかに対して西洋医学の主治医と韓医学の主治医の両方をつけて、それで相談しながら治療するという試みです。たとえば韓国の私立の慶熙(キョンヒ)大学が「東西医学センター」というのを作りまして、とにかく西洋医学の医者と韓医学の医者両方を1人の患者さんにつけてですね、それで治療をしようとして頑張ってます。
蓮風 慶熙大学が出てきたからご紹介申し上げますけど、さっき差し上げた経穴の解説の本(『藤本蓮風経穴解説 増補改訂新装版』メディカルユーコン刊)がありますね。これを慶熙大の教授が推薦してくれてハングルで出版されることになりました。1、2年のうちです。ただ面白いのは先程の先生の話を聞いたら西洋医学と東洋医学は犬猿の仲だというのに、この本を韓医学の教授が薦めたかというたら違うんですよ。西洋医学の循環器、それから神経系専門の教授が、この本は良いから訳しなさい、と言ってくれた。ちょっと面白いですねぇ。
関 はい。今、韓国では西洋医学の医者と韓医学の医者と全然違うライセンスで、それでその両方のライセンスを取ろうとする医者もいます。
蓮風 両方とも死亡診断書を書けますか。
関 そこは、よくわかりません。〈続く〉