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藤本蓮風さん(写真左)と児玉和彦さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。和歌山県岩出市の医療法人明雅会「こだま小児科」理事長で医師の児玉和彦さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の続きです。3回目の今回は児玉さんの鍼灸への感想から話が始まりますが、児玉さんにとっては「鍼灸=蓮風さん」のようで、出会いの最初から、病に向き合う姿勢に影響を受けられたようです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 ご縁があって児玉先生は我々「北辰会」のドクターコースで勉強されています。(蓮風さんが奈良市で開院している)「藤本漢祥院」で週1回の研修もされて、実際に鍼治療も受けておられます。そういう経験を重ねておられる中で、この医学についてのざっくばらんな感想を聞かせていただきたい。

 児玉 鍼灸に関してっていうことですよね。

 蓮風 そうですね。鍼灸、漢方薬…一般論でもいいし、鍼灸そのものについてでもいいし。特に先生は西洋医学専門でずっとやってこられた。その中で、まぁ言うたら「異邦人」と出会ったわけですよね(笑)。

 児玉 そうですね(笑)。

 蓮風 その異邦人がいかなるものか、ということ。これは今後、変わっていくだろうと思いますけど…。今の時点で先生から見て異邦人がいかなるものかというのを我々は知りたいということなんです。

 児玉 私が(東洋医学を)専門の先生に就いて学ぶのは蓮風先生が初めてなんです。こんなに長い期間ですね、親身になって教えていただいたのは初めてなので、私が持ってる東洋医学の考え方っていうのは、藤本蓮風先生そのものなわけなんです。なので、東洋医学一般とかってなってくると、ちょっと正直言って分からないです。けれど、蓮風先生の診療を拝見してて、先生の印象は、最初3年前にお会いしたときと全く変わらないです。最初に先生の診療を拝見したとき「あっ、この人は本物の医者だな」と思ったんですよ。

 蓮風 あ、そうですか。嬉しいですね。

 児玉 これを言うと何ていうかちょっと失礼な言い方かもしれないんですけど…。

 蓮風 いやいや。

 児玉 何ていうか、この人は本物。僕も色んな所で色んな医者に出会ってきましたし、有名な先生の診療も見てきましたけれども「あ、この人は本当の医者だな」と感じました。結局、人を治す気迫に満ちてるって言うんですかね。

 蓮風  あー、気迫ね。あ、そうですか。

 児玉 そういう所をこの3年間ずっと学び続けてるというか、そこが一番大きいかなと思ってます。
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 蓮風 なるほどね。特に僕の鍼の場合は、著しく鍼の数が少ないですね。こういうことについてどうですか? 奇異の念が最初はあったと思いますが。

 児玉 ええ、まぁ、そうですね。奇異と言うか、私は鍼の治療を見たのが初めてだったので。

 蓮風 あー、そうですか。

 児玉 たくさん刺す鍼を見たことないんですよ。

 蓮風 あはは!それはね、よかったですね(笑)。

 児玉 テレビで見たくらいのもので、実際にはなかった。それまで私が接してきた鍼の治療というのは、鍼治療に保険適用をするときに診断書を書くくらいでした。

 蓮風 はいはい。あれはねぇ、色々と考えがあるんだけれども。日本の医療の中では、患者さんにできるだけ負担がかからんようにするためにはそういうことが必要なんですね。それはあくまでも医者の方の監督下に置くという日本の医療制度の表れなんです。だから(鍼灸師には)独立した医者としての権限がない。これはしかし現段階では仕方がないかなと思うんですよね、将来は独立した東洋医学の医者、中国がやってるように「中医」と「西医」という関係になれば一番いいんだろうけども、今の段階では無理ないなと思います。

 児玉 あー、そうですか。<続く>

 ※現在の日本の医療制度では(1)神経痛(2)リウマチ(3)腰痛症(4)五十肩(5)頚腕症候群(6)頚椎捻挫後遺症、その他、これらに類似する疾患などに限り鍼灸治療への保険適用が可能。患者は、これからかかろうとする鍼灸院に問い合わせて用紙(同意書)をもらい、その用紙を治療を受けているかかりつけの医院・病院などに持参して必要事項を記入してもらう。

 または同意書の代わりに、病名、症状及び発病年月日が明記され鍼灸の治療が適当であると判断できる診断書を書いてもらう。その記入済みの書類と保険証、印鑑を鍼灸院に持参すれば、保険適用での治療が可能となる(ただし鍼灸院ごとに保険の取扱いが可能かどうかの確認が必要)。長期間にわたり治療する場合は3カ月ごとに医師の同意が必要となる。(「北辰会」註)