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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」
鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」は東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の13回目をお届けします。前回は川嶋さんから「就職先」として医者の道を選ぶ若者への厳しい批判が出ましたが、今回は患者への提言です。自分の身体なんだから、もっと自身も勉強して病気に取り組まないと、日本の将来が危ういと警鐘を鳴らしていらっしゃいます。(「産経関西」編集担当)
蓮風 僕は、患者さんや患者さんの家族に、医者にかかる場合に大事なことがあるんやでと注意するんです。それは、そのお医者さんがあまり健康な人ではあかん、ということ(笑)。
川嶋 そうでしょうね。
蓮風 今は健康になったけれども、昔はよく病気をしたような先生が本物やで、と言う。僕も実際身体が弱かった。鍼を持ってから元気になった。21歳で開業したんですけれどもね、それまでは病気ばかりしていた。しょっちゅう父親…先代に鍼をしてもらっていた。
開業してしばらくしたら、病気というものはこういうものだと腑に落ちてきた。だんだんだんだんね、元気になりだした。30歳代で馬術をやりだした。いまだに続いていますけど。ほとんどもう病気しないですね。耳はちょっと聞こえにくいけれども、これは、ぼつぼつ治さないと…神様の課題やなと思って、いま工夫をしているんですけれどもね。
川嶋 僕も病気を抱えています。右足に腫瘍、右耳は聞こえません。でも普通に運動もでき、片方の耳は聞こえています。もはや生活の一部と化しています。
蓮風 それから、先生から「患者さんが賢くなり、より良い医療を受けるためにはどうしたらいいのでしょうか?」という質問もいただいていますね。
川嶋 要するに人任せにしないことですよね。
蓮風 病院に任せっきりではいかん、自分が積極的に治さないかん部分を意識して改善していかなね。
川嶋 少なくとも自分の不調に関しては医者並みのプロになって欲しいといつも言うんです。何も全般的に医学を学べと言っている訳ではありません。
たとえば、血圧が高いといわれたら、血圧が高いとはどういうことなのか。答えが出せないようであれば、医者の言いなりになるしかないわけで、それで自分の望まないことを言われても断れるはずがありません。そのくせ(医者の診断や処方に)懸念を訴える患者さんもいる。
蓮風 まぁ、でも、そんな場合に何じゃ“かんじゃ”言うのが“患者”やという諦めもあります、私は(笑)。
川嶋 僕が癌(がん)を治療する時に、患者に必ず聞くのは、「なぜあなたは癌になったのですか?」ということです。ギョッとしますよね、たいがい。「えっ、考えたことがないんですか。なんであなた病気になっちゃったんでしょ?」と聞いてみても、「いや、考えたことがないです」と言う方が多い。

蓮風 先生は「北辰会」方式のカルテをお持ちですか。
川嶋 はい。前にいただきました。
蓮風 あれの中で一番言いたいことは、要するに「あなたの生活の中で、どんな歪みがありますか?」ということ。「仕事のしすぎですか」「運動はしていますか」。「食べ過ぎはないか」ということを、克明に聞くんですわ。
川嶋 当たり前のことですよね。
蓮風 そうするとね、賢い患者さんだと、自分は、こんなことが原因で病気していたんだと気づくんです。それこそ、生活環境を変えないと、いつまで経っても、鍼がなんぼよく効いても治らないから…。それだけ患者教育というのは、ものすごく大事ですね。先生がおっしゃるように、なんで病気になったのか、をちょっとは自分で考えなさいと伝える。これは大事なことやと思いますわ。
川嶋 人任せにしているのに、自分の希望と違う薬を提案されると文句を言う。これでは医者が文句を言うのも無理ないことです。自分がもしも薬が嫌ならば、その薬のいい所と悪い所を知った上で断るべきでしょう。そこで医者と話し合えば、医者も納得するんです。ところが頭ごなしに副作用副作用と言ってきますから。それじゃあ医者は面白くなくて当然です。
蓮風 それはそうですよね。
川嶋 自分なりに勉強して、ちゃんと医者と対等にしゃべれるぐらいでないと。結局、医者からすれば、人任せにするからこちらとしてはしっかり考えて治療を提案しているのに、それを否定するとは失礼千万。じゃあ来るなと言うことになってしまうんです。
医者に考えさせる前に、自分の病気とその治療をしっかり理解して、できれば医者が意見を言う前に、「こういう治療は自分としては好まないので、それに関しては先生からそういう提案があっても、お断りすることになる。ただし、先生には一切ご心配はかけませんから」と言えれば完璧です。この「先生のせいにはしません」の一言は大切です。医者は訴えられたくないからです。
西洋医学には診療ガイドラインなるものがあって、それに沿った医療をやっていれば、もしも患者さんが不幸な結果になっても、訴えられても負けません。ところが、ガイドライン通りにやらずに、たとえば患者さんが亡くなってしまい、家族に訴えられたらおそらく裁判で勝てないでしょう。…ということはガイドラインのある疾患については(訴えられないために)医者がそれをすすめてくるのは当然でしょう。
もし、ガイドライン通りが不満で(ガイドラインから外れた)別の方法を望むのであれば、医者にその責任を押し付けないということが必須になります。また、医療を受ける側にも、もっと国のことを考えていただきたい。
ざくっとした話ですけど、だいたい日本の国の一般会計ベースでみて税収は40数兆円くらいで、ひらたく言えば借金で補填して全体で100兆円くらいになっています。このうち社会保障費関係費が約30兆円で、さらにその中で、年金医療介護保険給付費が20兆円くらいで一番割合が大きい。それだけでみると、ピンとこないんですけど、国の一般会計以外の保険料や地方の税金でまかなわれている社会保障費給付費全体では年間100兆円以上になっています。このうち医療費が3割以上を占めていて、これだけで国の税収額に近づいてしまっているわけです。
一般家庭で給料が40万くらいしかなかったら、90万使う家庭はどこにもありません。支出を40万以内に抑えるはずです。ところが日本という家庭(国)は40数万円しか給料がないのに、かなりの部分を医者につぎ込んで足らない分を借金でまかなっているような状態です。
しわ寄せは子供や孫に行きます。こんな馬鹿な国がありますか。このままではいずれ日本は滅びます。これは、身体のことを全部医者に任せて来たから出てきた弊害なんですよ。こういうことも学んで、それではいけないんだということを一人一人が分かって、そのためならどうするのかを考えるべきです。解答は単純です。医者に行かないことです。
医者を失業させるくらいにならなければ財政再建なんて不可能なんです。そのためには病気にならないことです。現在の医療制度下では、医者は病気にしてなんぼなので、病気にならないアドバイスなどしてくれっこありません。病気にならないためには健康や病気について医療を受ける側が勉強しなければいけません。〈続く〉

