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診察中の村井和医師。患者の舌の写真を撮影するカメラは必需品
=和歌山市吹屋町「和クリニック」
「鍼(はり)」の力を探る「蓮風の玉手箱」の村井和・和クリニック院長と、鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談も9回目となりました。今回はお話も最後に近づいたところで、同席していた蓮風さんの内弟子さんたちから出た質問に対する村井さんの回答から始まります。鍼灸の優しくなでるような触診方法「フェザータッチ」について、練習方法やフェザータッチをできるようになって病院での外来の触診などが変わったか、どうか…という修行中のお弟子さんならではの質問でした。(「産経関西」編集担当)
村井 練習法は特にないんです。北辰会(の研修)に行った最初のころ、「触り方が違う」とずいぶん言われてタオルの上のフワフワとしたところだけ触るとか、その場では練習するんです。でも帰ったら忘れてて全然練習しなかったんです(笑)。自分の病院の中で反対されながら(鍼灸を併用した)治療をしていたじゃないですか。目の前に重症な患者さんがいて、全部自分の責任だし、間違ったことをしたら悪化もする。悪化させたこともあって、もの凄く怖いんです、やっぱり命に関わるので。ご指導頂くには、先生に正確に情報を伝えないといけないし、そして早く言わないといけない…。
患者さんはどんどん毎日朝と夕でも凄い変化していきますからね。命に関わるので必死なんです。その必死が良かったのかなって思います。脈とかも分からないんだけど、先生に伝えないといけないからと思って、とにかくもう必死なんですよ。それが良かったとしか思えないです。
病院でもお腹を診察することがよくあるんですけども、西洋医学的な見方ってけっこう肝臓とかもグリっと触ったりするんですけど、そんなことをしなくてもサラって触ったら肝臓がどこまであるとか分かるようになったんで。検診で中国人の女の子が来てお腹を診察していったら「凄く気持ちのいい触り方」って喜んでくれた事がありますね。ただの検診だけれども、触り方がやっぱり違うからって言って喜んでくれていましたね。
内弟子 (『鍼灸ジャーナル』に連載していた)「難病シリーズ」の中でも特に先生の記憶に残っている患者さんがいたらその話を聞かせてください。
村井 2つか、3つくらいあるかな。ひとつは喘息(ぜんそく)の患者さんです。酸素吸入をしてて、かなりの量のステロイドを点滴してました。それでも何日も治まらないっていう状態でした。精神的な事が原因で起こっているんです。それで先生に教えていただいた「霊台」だったと思うんですけど、「霊台」に鍼をしたら15分くらいで完全に治まって酸素(吸入)も要らなくなったんです。ゼーゼーしていたのも治まって、すぐ退院できる状態になったんですよ。やっぱり鍼はすごく効くんだなって思いました。
あとは、出血とかは、すぐ止まるっていうのはよく体験しました。うちの娘も、しょっちゅう鼻血を出していましたが、それも止まりました。肝硬変で出血傾向になった方の鼻血も耳鼻科で止まらなくて、もう本当にヘモグロビンも輸血しないといけない危険な状態寸前まで下がってしまうくらいだったんです。でもやっぱり鍼をしたら止まるんですよ。その時は「百会」の右とか左とかに鍼をして止血に成功していました。その方はちょっと黄疸もあったんで「肝胆湿熱」という病理も持っていたので「脾兪」の辺りにも鍼をいつもしていたんです。でも、そこ(脾兪)に打ったらまた鼻血が出だして。そしてもう一回「百会」の方にやったらまた止まって、「余計な治療をしたらいけないんだなぁ」っていう教訓を得ました。
蓮風 あれは、先生が(北辰会に入会して)病院(の勤務)に復帰した初期のころやったかな。ある患者が喀血が止まらんようになって、自分ところの病院で処置できないから、別の病院へ救急車を呼んで、先生も搬送して付いて行きはったんや。で、途中で(鍼で刺して血を出す)「刺絡」をやりはったんですね。
村井 そうですね、その状況が凄いので、救急車の中でやったということになっちゃっているんですけど、本当は救急車に乗る前なんです。喀血がひどくて、人工呼吸器を片肺だけ繋いで(別の病院に)連れて行くか、どうするか、という段階だったんですね。舌の写真を撮ろうと思って見たらあまりにも血まみれで、ちょっと(撮影は)やめとこうみたいな感じ。朝から出血していて、夜になるに従ってどんどん出てくる。もう本人も恐くなって…。私も病院から「主治医が対応して下さい」と呼ばれまして、行ったらすぐ鍼をしようと決めてたんですよ。で、刺絡して、背中の(内部の熱をさます)清熱もやったんです。それですぐに喀血が止まったんですね。
蓮風 で、その病院に行くまでに止まってきて?
村井 その場ですぐ止まってきて、呼吸も急に楽になって、安全に連れて行けたんですよ。で、向こうでもそれ以降全く出血がなくなって、手術の必要もなくなったんです。
蓮風 そういう経験は、鍼灸師で気づかん人がようけおるでしょ。で、鍼はこんだけ効くんやっていうことをね、先生は西洋医学をやりながらそういうことを証明なさった。
村井 あと初期の頃に、先生にお聞きする前にやってみようと思って、悪化させたことがありました。その時「十井穴」の「刺絡」にハマっていたんですよ。これ色々治るんやって思って。ハマってたんで、肺炎の患者さん入院されて、最初古代鍼で試しにやってみたら、それで熱が下がったんですよ。それで、もっと効くかもと思って、次に刺絡したら、しんどいと言い出して、酸素の状態もすごく悪くなってきて、熱も下がらなくなって。舌の写真もずっと毎日撮っていたんで、それを蓮風先生に見てもらって相談したら、「これは(血液が不足して循環も悪くなる)『血虚』が起こっている」っていうことで、三陰交に治療しました。それから、その方は(東洋医学への)こだわりが強い方で、点滴を拒否されたんです。鍼をすすめたら鍼の方が信頼できると仰るので鍼だけで治療して治ったんですね。(続く)
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