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現代医療のなかの「鍼(はり)」を考える「蓮風の玉手箱」をお届けします。医師で「藤原クリニック」院長の藤原昭宏さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんの対談の5回目です。前回は、痛みと心の問題がテーマでした。今回は、その続き。「魂」という言葉も出てきて、オカルト的な印象を受ける方がいらっしゃるかもしれません。でも一方で、人間を臓器などの“パーツ”別に考えてしまうことが本当に理にかなっているのでしょうか。そんなことを考えながら読んでいただくと、違う視点で身体を考えるきっかけになるかもしれません。(「産経関西」編集担当)
藤原 先生は常々、心から魂へつながっている、そこの問題について語られています。ところが、西洋医学(の教科書)では普通一般の内科学・一般の外科学で臓器別にずっーとありますけれども、それを書いているページが1ページも1行もないんですよ。それは精神科なんですよ。だから完全に分離されているんです。
ところが、内科でも外科でも何科でも患者は主訴を「痛み」として病院に来て、その後も訴えている方がいっぱいいる。臓器別に教科書にしているけれども、慢性疼痛になればなるほど心や魂の問題に絡んできますよね。なのに西洋医学では全く述べられてなくて、ジャンルは全く別…。人間は身体(物質)だけでできているんだというような考え方ですよね。
蓮風 物質ですね。
藤原 物質ですね。でも、そうじゃなくて、身体を支える心がないと、人間は絶対、活動もできないし、病むこともないと思うんですよ。ですから、それを一体化させるところに、その意味があるしそれが人間を診るということなんだと思うんです。
蓮風 面白い女性の患者がいるんです。カルテには名前と住所を必ず書かせますね。彼女の筆跡を鑑定してみたら、それがめちゃめちゃ当たったんです。女性やから結婚したら姓が変わりますよね、一般的に。男女両姓(別姓)でやる時代になってきているけれども、基本的には(入籍したら)男性側の名字をつけて、自分の名前とする。不思議なことに自分の名前のところははっきり書いているけれども、名字のところが薄いんや。おかしいなぁと。聞いたら夫は、そばにおるんだけれども離婚したいんですね。だから早く消したいという意識がでてくる。
また勉強して下さい。結構あれがヒントになって、この人の心の一番の中心点はどこにあるんかということが見えてくるんですよ。だからそういう心の中でもレベルの高い部分だろうと思うんです。それをまた魂の一部だと考えてもいいんだけれども、そういうものが病んでくるといろんな病気が出てきますね。
藤原 なるほどね。
蓮風 先生はそういう風に西洋医学を、ある意味高いところから見ておられるので、その分人間が少しずつ見えてくると思うんですわ。どうですかね。将来は東洋医学と西洋医学をどんな形で活かしていかはります?
藤原 それはやっぱりね、先ほど言いました魂という所あたりをもってきますと、やはり人それぞれの宗教観にもつながっていきます。その人その人個人個人を支えるバックボーンのようなものが必要で、それは患者さん自身が非常に強くてバックボーンを自分で立てられる人もおれば、宗教にすがる人もいます。その宗教も神さんを信仰する、とか仏さんを拝むとか、いろいろとありますけど、魂という事まで考えると、そういう領域まで踏み込んで考えていくことになりますね。
蓮風 そうすると「よろず教」みたいなものを作らんといけませんね。
藤原 そうですね。だから西洋医学・東洋医学…今まで、その合作っていうかね、2つまとめてそれでどうのこうのというのはあったわけです。やっぱり2つを1つにしてやるんだということはベースにはなると思いますけれども、やはりそこには、人間というのは心があって、その根底をなしているのは魂なんだと。その心と魂を支えるバックボーンというのが必要なんだと。そういう医学というのが絶対に必要なんだということをね、やはりその考え方を医学教育の根底にもってきておかないといけないと思います。
蓮風 本当はね。
藤原 本当はそうなんですよ。
蓮風 それをなんか最近では心療内科とかなんとか、ある意味あれ逃げですよね。
藤原 逃げですね。全然種類が違いますね。魂のことなんか考えてませんからね。ですからそのことをちょっと考えた上でやらないと行き詰まるし、見捨てられていく患者さんというのがどんどん多くなる。本当に救われないというかね、本当の意味でね。臓器ごとには救われても、人間として救われるかという問題になってきます。難しいんですが、そういう認識で医療をやっていかないとだめなんじゃないかな、と思うんです。
蓮風 なるほど。より具体的に言うと、病院の中でどういう風にもっていきます?
藤原 う~ん、その考え方でいうと…。〈続く〉
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