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藤本蓮風さん(写真左)と関隆志さん=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼の知恵を語る「蓮風の玉手箱」は東北大サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)高齢者高次脳医学研究部門講師の関隆志さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談をお届けします。8回目の今回は前回に続いて韓国の医療事情や、中国での西洋・東洋両医学の関係にも話題が及んでいます。いずれにせよ、両国とも日本ほど西洋医学が圧倒的に優位ではないようです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 医者と、我々鍼灸師のどこが一番違うかというと、死亡診断書が出せるかどうかなんですよ。最期の最期まで診てあげたいんですけど、なんぼ頑張ったかて死亡診断書は書けないんです。書いたとしたら違法やし、普通のそこらの臨床能力が高くない鍼灸師ではとてもとても死期の判断とその対処ができない。だから、まだまだ鍼灸で対応できる段階の患者さんを避けて通ってるわけです。私の場合は、もう50年間一生懸命この道に懸けてきたから「ああ、この患者さんはもってあと何日くらいだ」っていうのがわかるから、先手打ってそのご家族に伝えるけれど、あとは病院に任せるようにしたりします、死亡診断書を出せないから…。本当は患者さんがもう何をしても死ぬ、ということが解っていたら、先手先手を打っていかなあかんですよ、鍼灸師は…。
    

 関 ちょっと私の勉強不足で、そこはわかりませんが、今ですね、韓国で西洋医学のライセンスと韓医学のライセンスと両方取ろうっていうお医者さんが出てきまして…。これ大変なことで、片方取るのに6年くらいかかるんです。ですから両方で12年かかる。それほどの年数かけてでも2つの医者のライセンス取ろうという人が増えてきてる。

 蓮風 ほー、これどういうことですかねぇ。

 関 やはり両方必要だということですね。これもいくつかの意味があって、純粋に医学的に違う見方ができるっていうことと、それから韓国の場合は日本と違ってですね、西洋医学の医者は鍼とか漢方をできないんです。

 蓮風 あっそうですか。

 関 ええ。それから韓医学の医者は西洋医学の検査とか治療とかできないんです。ですからやはり両方必要だ、っていうことが一つと、それからあともう一つは経済的なこともあるんじゃないかと…。両方ライセンスあれば儲かる…。
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 蓮風 まあまあ。その点、中医学の方、私もついこの間まで誤解しとったんやけど、6年間やっぱり行きますよね。その中で西洋医学のライセンスを先に取って、そしてその上で中医学をやってというふうに聞きましたけども。

 関 私もそのへんちゃんとそれぞれのことを熟知してませんけども、基本的に、中医師って言いますけども、両方できるみたいなんですよね、西洋医学と。

 蓮風 そうですそうです、だから先に西洋医学の医師免許をとってその上で中医学を研鑽していくという。

 関 ええ、それ両方あってですね。西洋医学の大学と中医学の中医薬大学というのがありますけども、どっちを出てもどっちもできると。ただそのときには、たとえば西洋医学の大学を出たときは、やはり漢方とか鍼灸の研修を受けて、また中医薬大学出たときは西洋医学の研修を受けてっていうのが必要みたいですけれども、カリキュラムの中にはどっちも…。要するに西洋医学の医者の養成コースにも必ず漢方とか入ってるんですよね。それからその逆も。中医薬大学でも西洋医学をやりますから、中国はそういった点では相互に…(補完し合っている)。

 蓮風 そうですね、そういう点でお互いに話し合いができる土壌を作っている感じですね、中国のほうはね。

 関 要するに両方ある程度教えてますから、やはり教育(が大事)なんです。

 蓮風 なるほどね。韓医学の場合は西洋医学と全く別でライセンスが違うから、できれば両方取りたいという形で12年も掛けてやるということですね。〈続く〉