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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の3回目。川嶋さんが学生時代、北海道大学に「東洋医学研究会」を発足させたというエピソードの続きです。本格的に西洋医学を学ぶ前に東洋医学に触れたのは大きな「事件」だったようで、川嶋さんの医師としての世界観にも影響を与えているに違いありません。(「産経関西」編集担当)

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 川嶋 東洋医学研究会ですから、生薬の勉強も必要になりますね。これはまた不思議な話で、北大病院のすぐそばに小っちゃな食堂があって、よく食事をしたんですが、その近くに何とも奇妙な構えのお店があって、吸い込まれるように入って行くと、実は漢方薬局だったんですね。

 奥から先生が出てきまして…「君は?」と聞かれたので「北大医学部の学生で東洋医学研究会を作った」という話したら、それならうちの奥に古典がいっぱいあるからいつでも来なさいと。それから百味箪笥からいくらでも生薬引っ張り出して齧(かじ)ってもいいし、煎じてもいいし、何してもいいよって言われ、そこに日々出入りするようになりました。古典を読んで、基礎理論を研究会のメンバーと一緒に(大学での授業を受けながら)学びました。東洋医学研究会には5年いまして、その間2年間は代表をやりました。

百味箪笥:江戸時代、薬種商や漢方医が薬を保管するのに用いたタンス。たくさんの引き出しに生薬の名前が書いてある。(「北辰会」註)

 蓮風 ほー。

 川嶋 東洋医学研究会として初めて北大の学園祭に参加したのも僕が代表の時代です。

 蓮風 その頃は、もう西洋医学の勉強はなさってたんですか。

 川嶋 いやいや、当時は最初の2年間で一般教養(医学進学課程)でした。(注:当時も今も医学部は6年制で、現在は最初から専門分野=医学=を学ぶ)

 蓮風 そうなんですね。

 川嶋 はい、3年生から正式に医学部行くので専門はそれからなんです。

 蓮風 あー、そっかそっか。

 川嶋 ですから、まだ教養に居て、医学部に進学するのは分かっていたんですけど、その時代に鍼灸や湯液の勉強を始めたわけです。

 蓮風 その頃からやってはったんですね。

 川嶋 はい、解剖・生理をやる前に鍼灸の勉強を。

 蓮風 それが重要なんですね。私も医学部生を何人か教えたことがあるんですけども、3年生、4年生なってから聞くのとですね、その前に、西洋医学をやる前に聞くのとは全然違うみたいですね。それは大きなインパクトあったんですね。

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 川嶋 何しろ解剖をしながらツボに何かないかって探しましたから。結局、何も見つからないんですけど(笑)。

 蓮風 (笑)

 川嶋 本当に解剖しながら探しましたよ。「三里」はここなんだけど…って言いながら開けていって。

 蓮風 うんうん、なるほどね。

 川嶋 何にもないなぁって。

 蓮風 そうです、そうです。

 川嶋 何で上から触ると分かるんだろうって。やっぱり不思議な体験でしたね、解剖やりながら。

 蓮風 はぁー、そういうことから西洋医学やっても、ちょっとまた違う系統の医学も必要なんだということがわかるわけですね。〈続く〉