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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の15回目です。前回のサプリメントに続いて、今回は「アロマテラピー」と「ホメオパシー」について川嶋さんが語ってくださっています。ホメオパシーについては様々な意見があるようで、川嶋さんも単に西洋医学を否定しているだけの民間人が医療として行うことには疑問を呈しています。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 サプリメントの話のついでに聞きたいのですが、「アロマテラピー」とはどういうものですか。 

 川嶋 漢方生薬は水で抽出しますよね。アロマテラピーというのは、湯気の方にあがってくる成分を引き出して、それを利用するものです。だから、ベースはほとんど一緒です。

 蓮風 蒸留みたいなものですね。

 川嶋 蒸留です。漢方薬は一部動物や鉱物が含まれますが、植物の揮発成分がアロマテラピーです。

 蓮風 分かりました。

 川嶋 基本的に水で抽出される成分を利用したものが(漢方の)「湯液」です。

 蓮風 (アロマテラピーは)香りでやりますね。

 川嶋 揮発成分ですから嗅(か)ぐのは一つの浸入経路です。もちろん、身体の中に入ってくると、それなりの薬効はあります。

 蓮風 漢方でもそういうのは「薄荷(はっか)」がありますね。メンソール。あれは完璧にそういうことを使っているよね。

 川嶋 実際、気剤はそうですね。「蘇葉(そよう)」とか、香りの強いものは気を動かすと言われています。

 蓮風 「桂枝(けいし)」「肉桂(にっけい)」、みなそうですね。なるほど。

 川嶋 アロマテラピーも元は一緒ですね。植物だけですけど…。

 蓮風 先程のサプリメントとは…?。

 川嶋 植物を使う点ではハーブと同じで、植物療法のカテゴリーの一つですが、基本的には異なるものです。
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 蓮風 これも聞いた話なんですけど、「ホメオパシー」ですか。お腹を触ってこの薬がいいとかなんとかいうのは。

 川嶋 ホメオパシーは基本的には診察はなしです。話だけです。ホメオパシーというのは、自然界にあるもので、健康な人がそれを摂ったら体に毒になるようなものを薄めて入れて治療するものです。ですから、まずは自然界にあるものの性質を知らなければなりません。さらに、患者さんの病歴のみならず、性格、嗜好、生い立ちなども絡んでくるので、まともにホメオパシーの問診をしたら2時間ぐらいかかります。

 蓮風 どちらかというとアレルギー反応のようなものを診るわけですか。

 川嶋 それもありです。アレルギーを治療するのにアレルギーを起こす物質を薄めて投与する点では減感作療法に似ていますが、抗原と認識できるような量は用いません。たとえば、問診しながら、いかにもブンブンうるさい人にはハチを使うんです。やたらと沈みこんでいる人には海の底にあるもの、すぐに爆発する人には、火山にあるものを使うんです。死ぬのをすごく怖がっている人には、人を殺す毒を使うんです。

 蓮風 えっ。

 川嶋 たとえば、癌(がん)患者さんで死ぬのを怖がっている人は少なくありません。そういう人には、人を殺す毒を薄めて使うんです。すると落ち着く。

 蓮風 ああ、そうかそうか。

 川嶋 レメディ(ホメオパシーで使う薬のようなもの)は一部、現代の科学では検出できないレベルに薄めたものを用います。これを今の一部の科学者たちは信用しません。物が存在しないのに効くはずがないと言うのですが、存在しないのではなくて、検出できないだけの話で、存在している可能性はないとは言えません。

 ただ、治った人たちの血液から何かの成分が検出されることはありません。これは物質主義の方々にとっては、面白くないんです。とはいえ、ヨーロッパから世界中に拡がっていって、現在普及していないのはこの日本だけじゃないかと思うほどです。数年前、当時の日本学術会議の会長がこれを否定をしたものですから、日本では否定的に捉えている科学者がほとんどです。この背景には、医療資格のない民間人が扱っていて死亡事故すら起こってしまう点が挙げられます。

 たとえば、産まれたばかりの子供たちに不足しているビタミンKはシロップで補うことが推奨されているのですが、その代わりにレメディを与えられた子供が数カ月後に脳出血で亡くなって、その人が訴えられたという「事件」が新聞に掲載されました。産まれたての子供にとってビタミンKは毒でも何でもないんですよ。ホメオパシーは健康な人が摂ったら毒になるものを入れる療法なのに。つまりレメディを与えた人はホメオパシーを実施したのではなく、単に西洋医学を否定しただけなんです。

 西洋医学は、すべて悪い、医者の出すものはすべて悪いと決めつけてしまっていた。決してホメオパシーではないんです。ホメオパシーを知らない人に、これをホメオパシーだと思われてしまうと、我々はもうお手上げです。だからこそしっかりした教育が必要ですし、日本のようにお任せ主義の患者さんばかりがいる国では病気を知らない民間人がやってはいけない医療なんです。だから「日本みたいに依存心の強い国は、現時点では薬の処方権を持たない人間に、ホメオパシーのレメディを処方させないようにしておかないと事故が起きる」と新聞にコメントをしたこともあります。

 また権威のある先生が全て正しいわけではないのに、権威のある学者がホメオパシーという200年以上の歴史を持つヨーロッパの伝統医療を否定する見解を出したら翌日には、日本医師会、歯科医師会、獣医師会、薬剤師会が一斉に右へ倣え。そんな短い期間での判断なので、きちんと検証などしていないはずです。偉い先生の意見に異議を唱える賢い見識者は存在しないのか、いても無視されるのがこの国の変な所です。

 明治時代の脚気論争もそうでした。陸軍軍医部長の森林太郎(森鷗外)が、「脚気は脚気菌によって発症する」として、脚気をタンパク質の不足とした海軍軍医の高木兼寛の説を誤説とした論争です。その後、日清戦争、日露戦争で脚気による死者数が戦死者数を上回ってしまったわけです。その時の教訓が活かされてないですよね。

 蓮風 その根本は、医療行政がきちんとできていないという事ですね。

 川嶋 できていないということです。

 蓮風 そういう事ですね。〈続く〉