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鈴村水鳥さん=奈良市「藤本漢祥院」
鍼の知恵を明らかにする「蓮風の玉手箱」をお届けします。小児科医の鈴村水鳥さんと鍼灸学術団体「北辰会」代表で鍼灸師の藤本蓮風さんとの対談の3回目です。難病を発症した鈴村さんが鍼で日常生活を取り戻し、ご自身の患者さんにも勧めて効果があったというのが前回のお話でした。今回はそのエピソードを受けた蓮風さんの質問から始まります。(「産経関西」編集担当)
蓮風 いろんな考え方があるけども、普通の生活をしながら治せたら最高ですよね。そういう意味では東洋医学は大きく貢献したと言えると思います。そういう事を通じて先生はいよいよ本格的に鍼を勉強しようという気持ちになられたと思うんです。先生は多くの鍼灸師をご覧になられたわけですが、先生の目から見られてどうですか? いい点も有るだろうし、悪い点もあるだろうし、鍼灸師のために、ぶっちゃけた話をしていただけるとありがたい。
鈴村 私の存じ上げる鍼灸師の先生は、イコール「北辰会」の先生になってしまいます。ちょっと幅が狭くて(現実と)少しズレがあるかもしれませんが。「北辰会」にいらっしゃる先生方は非常に熱心ですね。
蓮風 いわゆる(リラクゼーションを主目的にした)慰安鍼も受けていたという話しされていたじゃないですか? そういう先生達も含めて鍼灸師のイメージを、もしお持ちだったらお話し頂きたいのですが。
鈴村 慰安鍼を行っていた先生も患者さんに優しい先生でした。でも、今は西洋医学がかなりネットとかで浸透している時代になっているので、鍼灸師の先生方がどれぐらい西洋医学に対して知識をお持ちなのかというのが知りたい所にはなります。患者さんからも質問されることが多いと思いますし、西洋医学は全く別物と考えず目の前の患者さんが西洋医学ではどのような治療を受けているかということは知っていらっしゃった方が良い治療に結びつくと思います。
しかしお人柄とか熱意とかは本当に北辰会の先生方から感じます。堀内齊●龍先生(大阪・鶴橋「天晴堂鍼灸院」院長)=●:醫の酉が巫=も、村井和先生(内科医、和歌山「和クリニック」院長)も「ドクターコース」で、すごく熱心に教えてくださいます。同じ愛知県で開業されている先生方にもすごく細かく丁寧に患者さんのことを教えて頂いています。後はやっぱり内弟子の先生方を(初めて患者として)ここにきた時から見ているんですね。
蓮風 なるほどね、おっしゃることは分かります。
鈴村 すごい恩を感じていますし日々変化される様子に刺激を受けます。
蓮風 これからまた色んな鍼灸の先生と出会って鍼灸といっても、いろいろあるんだなとお感じになって、そこからもう一回見つめ直して頂くと我々は有り難いと思っております。
ところで、先生が鍼を持つことによって周囲、ことに西洋医学のドクター、看護師さんたちの反響はどうですか? かなりうさん臭く思われますか?
鈴村 西洋医学のドクターたちからは正直厳しい視線を感じることは多いですけれども、看護師さんや薬剤師さんの方は受け入れがかなりいいようなイメージがあります。先日、簡単な導入ですが、東洋医学の講義みたいなものを病棟で看護師さん向けに行いました。メインは漢方薬の話になったのですが、アピールする良い機会でしたので鍼も持って行って、見せたり実際に少し打ちました。予想以上にレスポンスが良く、みなさん自分も受けてみたいと思われたようでした。
蓮風 そういう雰囲気がありましたか?
鈴村 非常に感じましたしその後も治療の質問などを受けます。
蓮風 それは味方になってくれますから、大事にせないかんですね。どうしてもドクターたちの場合は「わしらは医学の最先端や!」って、世の中が大いに認めた医学だという誇りがあると思います。西洋医学が大きな貢献していることも事実やけれども、同時にそれが全てかというと、そうではないということを訴えていくのが我々の仕事。その事によって結局、患者さんには色々な選択肢があることが広く知られて、その中で「こういう治療もありますよ」と言えたら、我々はもう納得なんですけれどもね。
そういう事を知らずにして本当に不幸な最後を迎えたり、一生、薬を飲み続けたり…とかね、そういう問題を私はかなり鍼で克服できると思うんです。先生に頑張って頂いて、世の中にこういう医療もあるんだということを言ってもらえれば非常に有り難い。またそういう先生達を作り出す為に「北辰会」では「ドクターコース」というものがあってそこで(医師と)一緒にやって、鍼はこうなんだよ、ということを伝えたいということでやっているわけですね。
話はどんどん進んでいきますけれども、ドクターになられて一番最初の感想は何でしたか?
鈴村 すごい本当に嬉しかったんです。すごい幸せでした、本当に。
蓮風 子供のころから願って来て・・・。
鈴村 むちゃくちゃ嬉しかったです。
蓮風 そりゃ、そうでしょうね。
鈴村 それしか憶えていないんです。嬉しかったことしか憶えていないぐらい、嬉しかったんです。
蓮風 しかし自然なことじゃないですかね。子供のころからそういう理想を抱いて頑張ってこられた、それが成就したという点では、そういうことだろうと思います。そして、ドクターになられて、もう研修医終わったんですね。
鈴村 そうですね。5年目になります。
蓮風 医者としての 今の感想があったらお聞かせ下さい。
鈴村 正直な所、大変だなと思う所も多々あります。それは仕事の面とか忙しさだけではなくて女性医師として妊娠、出産をしながら仕事を続けていくうえでの大変さも感じることがあります。男性と同じように当直をし、土日も働くことは子供を持つ医師にとって容易なことではありません。大変なことは沢山ありますが、それでもやっぱり天職だと思っています。本当に医者になれて良かったと、特に小児科医になれて良かったと思っています。でもこれは、先生の鍼がなかったらやっぱり無理だったと思いますので、本当に感謝しております。
蓮風 出会いというか、ご縁があったということだと思います。〈続く〉