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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」
鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」は東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談をお届けしています。11回目の今回は現代日本で鍼が存在する意義をめぐって医師と鍼灸師の関係性について語られています。社会の高齢化が進み、西洋医学的なアプローチに限界が見えてきたなかで、医師と鍼灸師が対等な立場で「病」に取り組める状況が必要になっているようです。(「産経関西」編集担当)
蓮風 「陰陽五行」とか「気一元」とか、こういう思想・背景を持つ鍼灸医学を医師としては、どのように、ご覧になりますか?
川嶋 結局、ベースになっている考え方が前提になければ、この学問は成り立ちません。ですから「気」というものがあるということが大前提で、「気」は万物の元で、それが病むから病気になる。それをコントロールするのが、鍼灸であり漢方薬であり、「気功」ですから。ということは、根本的に病んでいるものを治していけるひとつの手段ではないかと(思います)。鍼灸は歴史に裏付けされたエビデンスがあり、それによって正しい中医学的所見を把握すべきです。
蓮風 そこなのですよね。
川嶋 何千、何万どころではありません。何億、何十億という例があって、中医学的な異常は鍼灸で正常化できることは誰にも否定できないことでしょう。問題は中医学的診断と西洋医学的診断が一致するか否かです。
つまり西洋医学的診断による疾患を治癒せしめるかどうかが明確ではないんです。そこを結びつけていくのが、これからの医師であり、鍼灸師であり、そういう人たちの役割ではないかと僕は思っています。前提として、やはり「気」というものがあるのだということを考えていかないと成り立ちません。それをなくして、たとえば、自律神経反射だとかトリガーポイントで治療すればいいのだ、という考え方だとうまくいかないかもしれませんし、面白くないのです。
蓮風 なるほど。それと関連していくのだけど、あるいはまったく関連してないのかもしれないけど、現在の一般の鍼灸家に対して、何か先生の考えがあれば。
川嶋 単純に医者のサポーターだという感覚でいられたら悲しいことです。とにかく日本の医療を変え、さらに世界の医療も変えるんだぐらいの感覚を持っていただきたいと思っています。もともとは日本が持っていた伝統医学です。他の国はそれを利用してうまく融合しているにも関わらず、この国だけは西洋かぶれ。日本でこの融合を一番邪魔しているのは実は医者なんです。自分たちのプライドが許さないのでしょうか。自分たちのできないことで治療ができたら面白くないのでしょう。
たとえば、抗癌剤を使用している患者さんが鍼灸を併用して完全寛解できたとします。そうすると抗癌剤が効いたのか、鍼灸が効いたのか分からなくなってしまいますよね。自分の治療の価値がわからないと困る。これはもう医者の勝手な都合ですよね。これって医学の本質ですかということを問いたいくらいです。だから鍼灸をやる先生方は堂々と、日本で守ってきたものをやって、医者にはできない領域にも挑戦していただいて…。
蓮風 ところがね、私が一番言いたいのは、今の鍼灸家はどちらかというと西洋医学にすり寄っていくところがある。
川嶋 そうですね。
蓮風 それはそれで一つの考え方としていいのだけれど、でも、それでは本物の鍼の効果が出ない。
川嶋 そうですよね。
蓮風 私たちも鍼をして治して、西洋医学のデータと一致する部分もあるし、一致しない部分もある。でも、一致しなくても良いんだと…。それぞれの医学をやっているのだからと思っているのですけど…。その中にあって、鍼灸家に問いたい。先生がおっしゃる存在理由みたいなものを…。「なんで鍼やるのよ」と聞きたい。
これだけね、西洋医学が当たり前になって、医療は西洋医学だという時代に、なぜ鍼が存在しなくてはいけないかというね。その意識が鍼灸家には稀薄だと思うんです。
川嶋 そうですよね。そこは勉強不足ではないかと思いますよ。じゃあ本当に今、西洋医学で全ての病気をカバーできるのかというと、そうじゃなくて、患者さんには不満が募っているわけじゃないですか。人間が50歳で死んじゃう時代だったら良かったんです。そしたらたぶん西洋医学だけで、他の医学はいらなかったかもしれません。ですけど、今は50歳で死にません。男も80年生きるし、女に至っては90年近く生きちゃうわけですから。
そうなると西洋医学ではどうにもならないことが出てくるんです。老化はその代表です。病院行ったって、それは歳だからしょうがないと医者に言われます。でも病院に通う。完全に医療費の無駄遣いです。馬鹿みたいじゃないですか。医者にはどうにもならないのに。
蓮風 そうですね。
川嶋 あと、医者で(鍼灸の事を)分かっている人が少ないと思います。
蓮風 そもそも、それを分からせることができる、腕の良い鍼の先生が少ないです。
川嶋 そうですね。
蓮風 それはね、やっぱりね、治してなんぼやからね。我々は鍼灸の免許はあるけれど、医師免許もなんもないですからね。治したら、先生みたいな方が「あれは効くぞ」と評価してくれるわけで。
川嶋 「効くぞ」どころの話じゃないですよ。初めてお会いした時に、それはもう衝撃でしたよ、先生の治療は。
蓮風 ありがとうございます。そんなわけで、日本の鍼灸家にもっとしっかりして欲しくて、常に啓蒙しているんですけれども、もう50年叫び続けて、でも全然伝わらない。
川嶋 要するに、西洋医学で手も足も出なくなった患者さんを、鍼灸が良くした例をたくさん作って欲しいんです。〈続く〉





















