蓮風の玉手箱

このサイトは、2011年8月7日~2015年8月29日までの間、産経関西web上において連載された「蓮風の玉手箱」を復刻したものです。鍼灸師・藤本蓮風と、藤本漢祥院の患者さんでもある学識者や医師との対談の中で、東洋医学、健康、体や心にまつわる様々な話題や問題提起が繰り広げられています。カテゴリー欄をクリックすると1から順に読むことができます。 (※現在すべての対談を公開しておりませんが随時不定期にて更新させていただます・製作担当)

タグ:鍼灸


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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談も、ひとまずは最終回です。日本の財政を圧迫する医療費の削減の重要性を説く川嶋さんはこの対談でも、患者が賢くなる必要性を強調しました。今回はその締めくくり。お医者さんの「念のため…」は要注意かもしれません。(「産経関西」編集担当)

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 川嶋
 ある厚生労働省の方から聞いたんですけれども、通常の医療でないものを全然認めないと国民に対して申し訳がたたないけれども、認めてしまうと、今度は認めた責任が生じる。…ということは、責任を取りたくないから中途半端が一番良いんだという本音を語っていました。

 蓮風 卑怯なやり方ですね。

 川嶋 赤字国債は膨らむ一方です。これは、すべて次世代への借金です。抑えられる支出は抑えなければなりません。医療費を下げることは国民一人ひとりの努力で不可能なことではないんです。これがおそらく一番に考えねばならないことではないでしょうか。行政は患者の自己負担率を上げたり、保険の点数を下げたりするだけ。医者の方はどんどん点数が削られてくるものだから、薄利多売しようとします。

 患者さんの話など聞いている余裕はありません。患者中心の医療などどこかに行ってしまいます。いつまでも医者に依存していたら、この国はいずれ滅びます。

 蓮風 そういう意味でも患者は賢くならなければいけないですね。

 川嶋 もちろんです。

 蓮風 病院行って薬もらったらそれでいいんやという安易な考えではいかん。

 川嶋 そうですね。「薬はこれだけしかくれないんですか?」なんて言う患者さんすらいます。たとえば、一番単純な病気で風邪がありますね。風邪をひいて病院に行くと、日本では、抗生物質が処方されることが少なくありません。世界の7割の抗生物質は日本で消費しているという事実もあるんです。

 とんでもなく恥ずべき国です。(ウイルス性の)風邪に抗生物質は無効で、二次感染の予防にもならないっていう見解を、2003年か2004年に日本呼吸器学会も、日本感染症学会も出しているにもかかわらず、抗生物質が処方されるのはなぜか?…これがエクスキューズ(言い訳)なんです。要するに医者に、風邪だという診断ができていないんです。風邪だと診断ができていれば、抗生物質は効かないのですから出してはいけないんです。服用したら、風邪のウイルスに効かないどころか、逆に人体に有益な腸内細菌の善玉菌の方を殺しますから、免疫がガタガタになって却って治りにくくなってしまいます。
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 川嶋 それなのに処方されるというのは、風邪じゃなかったらどうしようと考えるからなんです、本音は。もしも患者さんが肺炎で、抗生物質を出さずに帰して家で死んで訴えられたら負けるわけです。誤診ですから。ところが、風邪だと診断しておいて抗生物質出して、風邪で死ぬ人はまずいませんから。治りが悪かろうが、訴えられっこないんですよ。

 だから、実力のない医者ほど抗生物質を出します。これが日本の医療の縮図みたいなものです。エクスキューズ医療です。患者さんの方は医者にお任せですから、抗生物質を飲んでも治らないというのは当たり前です。だから患者さんは賢くなって、たとえば「先生、私の診断は何ですか?」と聞いて、「風邪だよ」と言われ、処方箋(せん)に抗生物質が書いてあったら、「じゃあ何で処方箋に抗生物質があるんですか。風邪には抗生物質が無効だと呼吸器学会、感染症学会も言っているではないですか」と言うべきでしょう。こう言われた医者はぐうの音も出ないはずですよね。怒ってしまうかもしれませんが。でも、それぐらい患者さんには賢くなって頂きたいということです。

 医者の「念のため」という言葉は、患者さんのためではなく医者自身のためであることが少なくありません。医者が「念のため、この検査しておきましょう」って言ったら、この医者のためという事です。本来なら診ただけで検査が必要か否か分からなければなりません。自信がないか、あるいは検査で儲けようとしているからそういうこと言うのかもしれません。

 「念のため、この薬を出しておきましょう」っていうのは、それこそ自信がないが、この薬を出しておけば訴えられることにはならないだろうと思ったときの発言かもしれません。その言葉を使う医者ほど、力がないんだなと思います。患者さんはもっと賢くなって、医者の言っている言葉の裏の意味を解釈して欲しいですね。

 蓮風 分かりました。色々伺っていて面白いのですが、最後に鍼灸師の話ですけれども、結局のところ、現在の鍼灸師は根本の所で何をやったら、その存在理由を説明できると思いますか。

 川嶋 やっぱり医者にできないことをやって欲しいですね。

 蓮風 そういうことですね。だから、私が難病を治すのが面白いと常々言う理由はそこなんですね。

 川嶋 本当にそう思います。そういう症例が事実として目の前に出てくれば、これでもか、これでもかと出てくれば、エビデンス云々という話ではなくなっちゃいますよね。

 蓮風 そうですね、分かりました。また機会があれば是非ともまた出て来ていただきたいと思います。

 川嶋 時間ができたらまた勉強に来たいと思っています。

 蓮風 非常に面白い話でした。ちょっと私のイメージと違っていましたけれどもね。<了>

 ★次回から名古屋・名鉄病院小児科医師の鈴村水鳥さんをゲストにお迎えします。


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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の15回目です。前回のサプリメントに続いて、今回は「アロマテラピー」と「ホメオパシー」について川嶋さんが語ってくださっています。ホメオパシーについては様々な意見があるようで、川嶋さんも単に西洋医学を否定しているだけの民間人が医療として行うことには疑問を呈しています。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 サプリメントの話のついでに聞きたいのですが、「アロマテラピー」とはどういうものですか。 

 川嶋 漢方生薬は水で抽出しますよね。アロマテラピーというのは、湯気の方にあがってくる成分を引き出して、それを利用するものです。だから、ベースはほとんど一緒です。

 蓮風 蒸留みたいなものですね。

 川嶋 蒸留です。漢方薬は一部動物や鉱物が含まれますが、植物の揮発成分がアロマテラピーです。

 蓮風 分かりました。

 川嶋 基本的に水で抽出される成分を利用したものが(漢方の)「湯液」です。

 蓮風 (アロマテラピーは)香りでやりますね。

 川嶋 揮発成分ですから嗅(か)ぐのは一つの浸入経路です。もちろん、身体の中に入ってくると、それなりの薬効はあります。

 蓮風 漢方でもそういうのは「薄荷(はっか)」がありますね。メンソール。あれは完璧にそういうことを使っているよね。

 川嶋 実際、気剤はそうですね。「蘇葉(そよう)」とか、香りの強いものは気を動かすと言われています。

 蓮風 「桂枝(けいし)」「肉桂(にっけい)」、みなそうですね。なるほど。

 川嶋 アロマテラピーも元は一緒ですね。植物だけですけど…。

 蓮風 先程のサプリメントとは…?。

 川嶋 植物を使う点ではハーブと同じで、植物療法のカテゴリーの一つですが、基本的には異なるものです。
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 蓮風 これも聞いた話なんですけど、「ホメオパシー」ですか。お腹を触ってこの薬がいいとかなんとかいうのは。

 川嶋 ホメオパシーは基本的には診察はなしです。話だけです。ホメオパシーというのは、自然界にあるもので、健康な人がそれを摂ったら体に毒になるようなものを薄めて入れて治療するものです。ですから、まずは自然界にあるものの性質を知らなければなりません。さらに、患者さんの病歴のみならず、性格、嗜好、生い立ちなども絡んでくるので、まともにホメオパシーの問診をしたら2時間ぐらいかかります。

 蓮風 どちらかというとアレルギー反応のようなものを診るわけですか。

 川嶋 それもありです。アレルギーを治療するのにアレルギーを起こす物質を薄めて投与する点では減感作療法に似ていますが、抗原と認識できるような量は用いません。たとえば、問診しながら、いかにもブンブンうるさい人にはハチを使うんです。やたらと沈みこんでいる人には海の底にあるもの、すぐに爆発する人には、火山にあるものを使うんです。死ぬのをすごく怖がっている人には、人を殺す毒を使うんです。

 蓮風 えっ。

 川嶋 たとえば、癌(がん)患者さんで死ぬのを怖がっている人は少なくありません。そういう人には、人を殺す毒を薄めて使うんです。すると落ち着く。

 蓮風 ああ、そうかそうか。

 川嶋 レメディ(ホメオパシーで使う薬のようなもの)は一部、現代の科学では検出できないレベルに薄めたものを用います。これを今の一部の科学者たちは信用しません。物が存在しないのに効くはずがないと言うのですが、存在しないのではなくて、検出できないだけの話で、存在している可能性はないとは言えません。

 ただ、治った人たちの血液から何かの成分が検出されることはありません。これは物質主義の方々にとっては、面白くないんです。とはいえ、ヨーロッパから世界中に拡がっていって、現在普及していないのはこの日本だけじゃないかと思うほどです。数年前、当時の日本学術会議の会長がこれを否定をしたものですから、日本では否定的に捉えている科学者がほとんどです。この背景には、医療資格のない民間人が扱っていて死亡事故すら起こってしまう点が挙げられます。

 たとえば、産まれたばかりの子供たちに不足しているビタミンKはシロップで補うことが推奨されているのですが、その代わりにレメディを与えられた子供が数カ月後に脳出血で亡くなって、その人が訴えられたという「事件」が新聞に掲載されました。産まれたての子供にとってビタミンKは毒でも何でもないんですよ。ホメオパシーは健康な人が摂ったら毒になるものを入れる療法なのに。つまりレメディを与えた人はホメオパシーを実施したのではなく、単に西洋医学を否定しただけなんです。

 西洋医学は、すべて悪い、医者の出すものはすべて悪いと決めつけてしまっていた。決してホメオパシーではないんです。ホメオパシーを知らない人に、これをホメオパシーだと思われてしまうと、我々はもうお手上げです。だからこそしっかりした教育が必要ですし、日本のようにお任せ主義の患者さんばかりがいる国では病気を知らない民間人がやってはいけない医療なんです。だから「日本みたいに依存心の強い国は、現時点では薬の処方権を持たない人間に、ホメオパシーのレメディを処方させないようにしておかないと事故が起きる」と新聞にコメントをしたこともあります。

 また権威のある先生が全て正しいわけではないのに、権威のある学者がホメオパシーという200年以上の歴史を持つヨーロッパの伝統医療を否定する見解を出したら翌日には、日本医師会、歯科医師会、獣医師会、薬剤師会が一斉に右へ倣え。そんな短い期間での判断なので、きちんと検証などしていないはずです。偉い先生の意見に異議を唱える賢い見識者は存在しないのか、いても無視されるのがこの国の変な所です。

 明治時代の脚気論争もそうでした。陸軍軍医部長の森林太郎(森鷗外)が、「脚気は脚気菌によって発症する」として、脚気をタンパク質の不足とした海軍軍医の高木兼寛の説を誤説とした論争です。その後、日清戦争、日露戦争で脚気による死者数が戦死者数を上回ってしまったわけです。その時の教訓が活かされてないですよね。

 蓮風 その根本は、医療行政がきちんとできていないという事ですね。

 川嶋 できていないということです。

 蓮風 そういう事ですね。〈続く〉

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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談も14回目となって終盤に近づいてきました。今回の中心テーマは「サプリメント」。ハーブもサプリメントの一種と言えて、伝統医療にも関係するようです。そして、「薬」とも言えるので、やはり利用する場合には心がけないといけない点もあるようです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 先生はよくサプリメントを使っておられるみたいですが、我々にはよくわからないんです。サプリメントを使う根拠は何ですか?

 川嶋 予防の原則は生活改善です。その柱の一つが食です。ただ、現代食には問題があって、三大栄養素(糖質、蛋白質、脂質)を十分にとっても、その代謝に必要な副栄養素(ビタミン、ミネラルなど)が一般食材に十分に含まれていません。十分に含まれているようなものはそれなりに価格が高い。全ての栄養素を自然の食材から摂るのが理想ですが、国民全員が高級食材を摂るのは不可能です。だから少々卑怯な手段ではありますが、サプリメントが必要になってくるのです。

 蓮風 あれはもともとアメリカですか。

 川嶋 ビタミン・ミネラルについては基本的にアメリカです。もちろんビタミン・ミネラル以外で、健康増進のために食物繊維やEPA(エイコサペンタエン酸)などを予防のために摂取することもありで、さらに、病気になったときには西洋薬並に効果のあるサプリメント、ヨーロッパではハーブが選択されることも少なくありません。

 蓮風 ああ、そうですか。

 川嶋 ハーブについてはアメリカというよりヨーロッパです。植物療法というヨーロッパの伝統医療の一つです。

 蓮風 伝統医療ですか。

 川嶋 何百年も前からヨーロッパでは植物から抽出された成分が薬として扱われてきました。中国にも「湯液」がありますね。日本でも、中国から漢方薬が入ってくる前は、山伏による薬草治療が行われていたそうです。生活の知恵ですね。その中から特に薬効成分の強いものを抽出して薬物が生まれてきたわけです。元は今で言うサプリメントが薬だったということです。
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 蓮風 我々は、よく聞かれるんですよ。サプリメントを飲んでいるけれども、これいいかと。サプリメントに対する基本的な考え方というか教科書みたいなものはあるのですか。

 川嶋 もちろんです。口から入るものですから、医薬品と同じような臨床試験をすることも可能です。臨床試験の結果、個々のサプリメントの効果・効能が書かれた文献がどんどん増えています。

 蓮風 結局、サプリメントは薬と捉えていいですか。

 川嶋 ある意味、薬ですね。漢方薬だって多くは植物から抽出されたもの、ヨーロッパで言ったらハーブに相当します。ハーブはサプリメントの範疇(はんちゅう)に入りますから。

 蓮風 漢方の場合は、漢方の理論でちゃんとまとまっていますからね。いいんですけれど。サプリメントの場合は、基準になるようなものはあるのですか。

 川嶋 漢方薬のような理論体系はないですね。

 蓮風 ないのが本当ですか。

 川嶋 理論体系はありませんが、科学的に臨床試験などで有効性が定められているものもあります。

 蓮風 先生たちは、どういうものが入っているのかは成分でもって見ておられるのですか?

 川嶋 ビタミン・ミネラルについては何がどのくらい入っているのかはしっかり見ます。ところが、原材料が書いてあっても、その有効性については全くわからないものも少なくありません。ところが、たとえば患者さんに、なぜこれを摂っているのですかと尋ねるとほとんどの患者さんが、ある人が良いといったから摂っているとおっしゃいます。勧める人を信じ込んでいるんです。

 蓮風 なんか信仰みたいになってるよね。

 川嶋 基本的にはなぜ良いのかを知って摂るべきでしょう。たとえば、僕は食事を摂る時に、食物繊維を先に摂るんです。でも、あまりにも外食が多くてですね、繊維質のものが上手く摂れてないものですから、サプリで食物繊維を補っています。これが卑怯な手段です。

 蓮風 なるほど。それで卑怯か。

 川嶋 本来は食物繊維の多い自然の食材から摂るべきなんでしょう。でも仕方がないからサプリメントでカバーしています。

 蓮風 そういう事を専門に指導できる人がおるんですか? あなたの身体にはこのサプリメントが良いとかなんとか。

 川嶋 やっとNR・SAなる資格が…。国家資格ではないのですが、元々国立健康・栄養研究所の事業が日本臨床栄養協会に移管され、制度化されています。その他にも、いくつかの団体が、資格制度を作っています。

 蓮風 ある事はあるんですね。それは信用できますか?

 川嶋 制度は信用できても、資格を持っている人間が信用できるとは限りません。やはり、お金がからむことなので。

 蓮風 結局、薬を売買することによって成り立つ人たちやから。

 川嶋 粗悪なものもありますし…。〈続く〉

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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」は東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の13回目をお届けします。前回は川嶋さんから「就職先」として医者の道を選ぶ若者への厳しい批判が出ましたが、今回は患者への提言です。自分の身体なんだから、もっと自身も勉強して病気に取り組まないと、日本の将来が危ういと警鐘を鳴らしていらっしゃいます。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風 僕は、患者さんや患者さんの家族に、医者にかかる場合に大事なことがあるんやでと注意するんです。それは、そのお医者さんがあまり健康な人ではあかん、ということ(笑)。

 川嶋 そうでしょうね。

 蓮風 今は健康になったけれども、昔はよく病気をしたような先生が本物やで、と言う。僕も実際身体が弱かった。鍼を持ってから元気になった。21歳で開業したんですけれどもね、それまでは病気ばかりしていた。しょっちゅう父親…先代に鍼をしてもらっていた。

 開業してしばらくしたら、病気というものはこういうものだと腑に落ちてきた。だんだんだんだんね、元気になりだした。30歳代で馬術をやりだした。いまだに続いていますけど。ほとんどもう病気しないですね。耳はちょっと聞こえにくいけれども、これは、ぼつぼつ治さないと…神様の課題やなと思って、いま工夫をしているんですけれどもね。

 川嶋 僕も病気を抱えています。右足に腫瘍、右耳は聞こえません。でも普通に運動もでき、片方の耳は聞こえています。もはや生活の一部と化しています。

 蓮風 それから、先生から「患者さんが賢くなり、より良い医療を受けるためにはどうしたらいいのでしょうか?」という質問もいただいていますね。

 川嶋 要するに人任せにしないことですよね。 

 蓮風 病院に任せっきりではいかん、自分が積極的に治さないかん部分を意識して改善していかなね。

 川嶋 少なくとも自分の不調に関しては医者並みのプロになって欲しいといつも言うんです。何も全般的に医学を学べと言っている訳ではありません。

 たとえば、血圧が高いといわれたら、血圧が高いとはどういうことなのか。答えが出せないようであれば、医者の言いなりになるしかないわけで、それで自分の望まないことを言われても断れるはずがありません。そのくせ(医者の診断や処方に)懸念を訴える患者さんもいる。

 蓮風 まぁ、でも、そんな場合に何じゃ“かんじゃ”言うのが“患者”やという諦めもあります、私は(笑)。

 川嶋 僕が癌(がん)を治療する時に、患者に必ず聞くのは、「なぜあなたは癌になったのですか?」ということです。ギョッとしますよね、たいがい。「えっ、考えたことがないんですか。なんであなた病気になっちゃったんでしょ?」と聞いてみても、「いや、考えたことがないです」と言う方が多い。

 「それじゃあ治らないじゃないですか。なった理由が分からなければ、治しようがないじゃないですか」と。「たとえそこにある癌を手術で取ったとしても、なった原因が正されていなければ、また新たにできちゃうじゃありませんか。あなたの病気を作った原因は何なのかを考えてみて下さい」と…。
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 蓮風 先生は「北辰会」方式のカルテをお持ちですか。

 川嶋 はい。前にいただきました。

 蓮風 あれの中で一番言いたいことは、要するに「あなたの生活の中で、どんな歪みがありますか?」ということ。「仕事のしすぎですか」「運動はしていますか」。「食べ過ぎはないか」ということを、克明に聞くんですわ。

 川嶋 当たり前のことですよね。

 蓮風 そうするとね、賢い患者さんだと、自分は、こんなことが原因で病気していたんだと気づくんです。それこそ、生活環境を変えないと、いつまで経っても、鍼がなんぼよく効いても治らないから…。それだけ患者教育というのは、ものすごく大事ですね。先生がおっしゃるように、なんで病気になったのか、をちょっとは自分で考えなさいと伝える。これは大事なことやと思いますわ。

 川嶋 人任せにしているのに、自分の希望と違う薬を提案されると文句を言う。これでは医者が文句を言うのも無理ないことです。自分がもしも薬が嫌ならば、その薬のいい所と悪い所を知った上で断るべきでしょう。そこで医者と話し合えば、医者も納得するんです。ところが頭ごなしに副作用副作用と言ってきますから。それじゃあ医者は面白くなくて当然です。

 蓮風 それはそうですよね。

 川嶋 自分なりに勉強して、ちゃんと医者と対等にしゃべれるぐらいでないと。結局、医者からすれば、人任せにするからこちらとしてはしっかり考えて治療を提案しているのに、それを否定するとは失礼千万。じゃあ来るなと言うことになってしまうんです。

 医者に考えさせる前に、自分の病気とその治療をしっかり理解して、できれば医者が意見を言う前に、「こういう治療は自分としては好まないので、それに関しては先生からそういう提案があっても、お断りすることになる。ただし、先生には一切ご心配はかけませんから」と言えれば完璧です。この「先生のせいにはしません」の一言は大切です。医者は訴えられたくないからです。

 西洋医学には診療ガイドラインなるものがあって、それに沿った医療をやっていれば、もしも患者さんが不幸な結果になっても、訴えられても負けません。ところが、ガイドライン通りにやらずに、たとえば患者さんが亡くなってしまい、家族に訴えられたらおそらく裁判で勝てないでしょう。…ということはガイドラインのある疾患については(訴えられないために)医者がそれをすすめてくるのは当然でしょう。

 もし、ガイドライン通りが不満で(ガイドラインから外れた)別の方法を望むのであれば、医者にその責任を押し付けないということが必須になります。また、医療を受ける側にも、もっと国のことを考えていただきたい。

 ざくっとした話ですけど、だいたい日本の国の一般会計ベースでみて税収は40数兆円くらいで、ひらたく言えば借金で補填して全体で100兆円くらいになっています。このうち社会保障費関係費が約30兆円で、さらにその中で、年金医療介護保険給付費が20兆円くらいで一番割合が大きい。それだけでみると、ピンとこないんですけど、国の一般会計以外の保険料や地方の税金でまかなわれている社会保障費給付費全体では年間100兆円以上になっています。このうち医療費が3割以上を占めていて、これだけで国の税収額に近づいてしまっているわけです。
 
 一般家庭で給料が40万くらいしかなかったら、90万使う家庭はどこにもありません。支出を40万以内に抑えるはずです。ところが日本という家庭(国)は40数万円しか給料がないのに、かなりの部分を医者につぎ込んで足らない分を借金でまかなっているような状態です。

 しわ寄せは子供や孫に行きます。こんな馬鹿な国がありますか。このままではいずれ日本は滅びます。これは、身体のことを全部医者に任せて来たから出てきた弊害なんですよ。こういうことも学んで、それではいけないんだということを一人一人が分かって、そのためならどうするのかを考えるべきです。解答は単純です。医者に行かないことです。

 医者を失業させるくらいにならなければ財政再建なんて不可能なんです。そのためには病気にならないことです。現在の医療制度下では、医者は病気にしてなんぼなので、病気にならないアドバイスなどしてくれっこありません。病気にならないためには健康や病気について医療を受ける側が勉強しなければいけません。〈続く〉

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藤本蓮風さん(写真左)と川嶋朗さん(同右)=奈良市「藤本漢祥院」

 鍼(はり)の知恵を語る「蓮風の玉手箱」をお届けします。東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授の川嶋朗(かわしま・あきら)さんと、鍼灸学術団体「北辰会」代表の藤本蓮風さんとの対談の12回目です。前回は現代社会は伝統医学を必要としているという話でしたが、今回は現場の問題点です。就職に困らない職業として医師をめざす人々も少なくないようで…。真面目に取り組む多くの医療人のため息も聞こえてきそうです。(「産経関西」編集担当)

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 蓮風
 今、うち(「北辰会」)の若者が協力して癌(がん)の症例の集計をしているんです。結構いい確率で改善しているのが分かったんです。

  川嶋 いいじゃないですか、それ。

 蓮風 集計がまとまったら見てくれる?

 川嶋 もちろん。

 蓮風 我々臨床家にしてみれば(患者さんが)治る事が楽しみ。川嶋先生のご紹介でいらっしゃった患者さんも、西洋医学的に見て確かに良くなっていますよね。そうなってくると、鍼灸は絶対必要だという世の中になると思うんですよね。

 川嶋 僕は大学の医学部から鍼灸学科に異動したわけですけれど、全く抵抗がなかったのはやっぱり先生のお陰ですよ。西洋医学でお手上げ状態の患者さんを先生は何とかしてしまう。そういうものを本当のものとしてやっぱり日本に根づかせたいといいますか…。

 蓮風 そうですね。ここで事前に川嶋先生からいただいた私に対する質問に答えていきたいと、思うんですが、まず「『北辰会』の施術は先生のオリジナルですか? それとも代々受け継がれたものですか?」というご質問に、お答えしますと、それは両方です。代々藤本家が伝えてきた鍼も含みます。だけど、中医学をベースとした「北辰会」方式をまとめたのは我々です。

 川嶋 ああ、やっぱりそうですか。

 蓮風 これは、やっぱり弁証をきちっとやって、ある程度数学的に誰でもできるものを作っておかないといけないと思ってね、医学だから。そういう意味で「北辰会」方式みたいなものを考えだして、今日2冊差し上げた本※はそれの結晶ですので、時間がある時に読んで頂きたいんですけど。

※「北辰会」が自費製作した2冊のテキスト。『鍼灸臨床能力 北辰会方式』の【理論編】【実践編】のこと。これらは(株)緑書房から順次出版予定で再編集準備中。

 蓮風 それと、「我が国の医師に望まれることは何ですか?」という質問ですが、もうすでに話が出てしまった感じですけどね。良いものを本当に良いと素直に認めてくれる度量のあるドクター、そういう人がたくさん出てきて欲しい。「北辰会」(の会員)にもドクターが十数人おります。そういう人たちを教育しまして、鍼を持つドクターになっていただこうと思って…。

 川嶋 日本の医者が悪いのはですね、日本医師会によるところも大きいのではないかと思います。あそこは医者の互助会のようなもので、何もしなくても適当に診ていればお金が入ってくるようなシステムを作っているんですね。ですから、ゴルフが上手な医者も少なくない。そんな暇ないはずなんですけど…。

 多くの開業医は、わからない患者さんだとすぐに大きな病院にまわしてしまう。アメリカでは開業するためにはいくつも試験をパスしなければいけないわけですね。つまり、開業医が最も能力的に高くなければいけないんです。でも日本では、開業医はどちらかというと適当に楽な患者さんばかり診ていて、適当にお金が入って来て、ゴルフやったりして遊んでばかりいる人も少なくありません。面倒な患者さんは大きい病院に回すんですが、大きい病院にいる僕らは専門バカですから、自分の専門分野以外はほとんど分からない。

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 蓮風 ある意味苦労していないんですね。

 川嶋 してないですよ。

 蓮風 病気治しに専念していたら必ず壁に突き当たってくるはずなのに、それがあまりないから。

 川嶋 「統合医療」と看板を出している人たちも安易なことばかりをするんですよ。たとえば、健康食品を勧める。これは安易ですよね。あんまり悪い影響起きないですから。最近多いのは何かを点滴する医者。たとえばビタミンCを大量に点滴する。それからオゾン療法とか。癌に対する効果がある程度説明されていて、抗癌剤より副作用が少なく、収入源にもなる。

 先生の「北辰会」方式を学ぼうと思ったら、それなりの研鑽を積まなければ無理じゃないですか?(同席している内弟子に向かって)彼らは何年も勉強しなければ習得できないじゃないですか。ところが、それほど危険のない点滴をするだけなら長期間の勉強もいらず、明日からでもできてしまいます。

 漢方薬の処方には本当は何年もの勉強を要するのですが、製薬会社のハンドブック程度で簡単に処方してしまう医者も少なくありません。ですから(上腹部で左右の肋骨弓下にある)季肋部の痛み訴える虚証の患者さんに大柴胡湯を処方して下痢が止まらなくなってしまうケースも出てきてしまうわけです。ちゃんとした学問を学ぶことを避けて、安易にできることでお金もうけをしている悪い医者もいるものですから、統合医療の旗色がますます悪くなってしまうんです。

 僕は、こういう医療をやればやるほど、統合医療とか代替医療を看板にして悪いことをしている医者に腹が立つんです。それを、一般の西洋医は「あいつら、効きもしないものを高いお金を取って適当なことをやっている」と評価します。勉強して真面目にやっている人間にとって、もっと言えば困っている患者さんにとって大変迷惑です。最近、医学部を目指す理由が就職に困らないからということになっているらしいんです。問題ですよね。

 蓮風 そういう噂は聞いたことがありますな。食いっぱぐれがないから。

 川嶋 今のところ、医者になったらまず就職の心配は不要です。僕も心配したことがありません。ある医大でこんな例があります。研修医で28歳の男の子が遅刻しがちなので研修委員会が注意をしようと本人を呼び出しました。そしたら、その場に一緒に母親が現れたんです。まずこれだけでもビックリなのに、その母親が言った一言が、「うちは代々開業医の家系でずっと続いて来ている。ここで研修修了証が出なかったらうちの子に継がせることができないじゃないですか。どうしてくれるんですか!」と凄んだから驚きどころではありません。

 委員会は、遅刻しがちだから本人に注意をしようとしただけなのに、母親同伴。そこで母親が謝るのではなく、反対に委員会の連中に凄んだんですよ。呆れてものも言えなかったそうです。これが今の日本の現状を代表していると思って下さい。

 今の研修医はこんなんです。こういう世界ですよ。昔は、研修医は帰れないなんて当たり前だったんですけれども、最近は一睡もできない当直を研修医に頼むと、色々な理由をつけて断られてしまうことがあります。あんまりしつこく頼むと「辞めます」と言うんです。就職に困らないですから。どこいっても食べていけますから。これじゃ良い医者は育たないですよ。病気を抱えているのは人間だということを無視して、病気を叩けば全ての人は幸せだろうと教わってくる。〈続く〉

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